• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実績報告書

アフリカの「自然保護という名の土地収奪」をめぐる重層的ポリティクス

研究課題

研究課題/領域番号 17H01937
研究機関早稲田大学

研究代表者

岩井 雪乃  早稲田大学, 平山郁夫記念ボランティアセンター, 准教授 (80507096)

研究分担者 丸山 淳子  津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (00444472)
中村 香子  京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 特任研究員 (60467420)
目黒 紀夫  広島市立大学, 国際学部, 講師 (90735656)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード自然保護 / 土地収奪 / green grab / 土地権利 / タンザニア / ケニア / ボツワナ
研究実績の概要

●研究目的: 本研究では、「よきもの」と考えられている「自然保護」が、実は「土地収奪」となっているアフリカでの実態(自然保護という名の土地収奪:green grab)に着目し、地域コミュニティに生じている影響および、それに対するコミュニティの対応を明らかにする。そのために、①自然保護が土地収奪となっている/いないの度合いが異なる4地域の事例(国名・地域:タンザニア・セレンゲティ、ケニア・アンボセリ、ケニア・サンブル、ボツワナ・カラハリ)を比較分析し、②コミュニティの内部およびそれを取り巻く外部アクターとの重層的なポリティクスを動態的に考察する。さらに、③土地権利の問題は、現在のみならず将来世代にも影響をおよぼす重要課題であるため、研究成果を調査地の住民およびローカルNGOに速やかに共有する場(利害関係者間対話:ISD)を創出する。このように本研究は、研究成果の社会還元を志向するものである。
●研究方法と成果:
タンザニア・セレンゲティ地域における研究では、国立公園(動物保護区)と村(人間活動エリア)の境界線にゆらぎがあることに着目し、ゆらぎの動態性を生み出す要因を抽出する実験をおこなった。具体的には、農作物を荒らす害獣となっているアフリカゾウが村に侵入してくる問題に対して、農民たちが実施する対策を協働でおこなった。
また、他の3カ所の調査地でも、土地権利に対する住民の動きを超下。ケニア・サンブル地域では、国際環境NGOによるコミュニティの土地を自然保護区化する提案に対して、反対する住民の言説を収集し、ケニア・アンボセリ地域では、NGOが推進して設立した保護区のその後の展開を調査した。ボツワナ・カラハリ地域では、土地権を獲得た後のコミュニティ内の新しい連携の動向を分析した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画にある①4地域の事例調査、②コミュニティの内部とそれをとりまく外部アクターとの関係性に関する調査は、順調に進んでいる。それぞれの地域コミュニティで、土地に対する多様な働きかけが観察できており、その背景にある論理には、地域の歴史的経済的社会的な文脈が影響した固有性が観察できている。タンザニアの事例では、ゾウ・農民・保護区レンジャー・セレンゲティ県野生動物官といったアクターが、境界線を越境する行為とそれを阻止する行為をおこなっていることが明らかになった。村の畑に侵入するゾウ、それを保護区に戻そうと追い払う農民、保護区にまでゾウを追って入ってくる農民を排除したいレンジャーと動物官、という構図である。このように、「自然保護という名の土地収奪」に対し、現場で発生するミクロな攻防戦の観察と記録を引き続きおこなう。
しかしその一方で、共通する点を見いだす萌芽も見られるので、さらなるデータを収集して、比較検討を深めていく計画である。

今後の研究の推進方策

2018年度は、4事例を比較検討する研究会を開催し、共通点や類似の傾向を研究チームで分析する。その内容をまとめ、日本アフリカ学会2019年度大会で発表するために準備を進める。
フィールドワークは、引き続き4事例でそれぞれ実施する。また、2019年度に実施予定の③利害関係者対話の準備も進める。

  • 研究成果

    (27件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件) 図書 (4件) 備考 (4件)

  • [国際共同研究] SEDEREC/Misseke Living with Elephants(Tanzania)

    • 国名
      タンザニア
    • 外国機関名
      SEDEREC/Misseke Living with Elephants
  • [雑誌論文] From “Displaced Peoples” to “Indigenous Peoples”: Experiences of the !Xun and Khwe San in South Africa.2018

    • 著者名/発表者名
      Junko Maruyama
    • 雑誌名

      African Study Monographs

      巻: Suppl. 54 ページ: 137-154

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 奪われる住民の観光便益―タンザニア・ワイルドライフ・マネジメントエリアの裏切り―2017

    • 著者名/発表者名
      岩井雪乃
    • 雑誌名

      アフリカ研究

      巻: 92 ページ: 95-108

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 政治化された「野生」-地域社会はグローバル化した野生動物といかにかかわれるか-2017

    • 著者名/発表者名
      岩井雪乃
    • 雑誌名

      環境社会学研究

      巻: 23 ページ: 34-52

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Gaps between the Innovativeness of the Maasai Olympics and the Positionings of Maasai Warriors2017

    • 著者名/発表者名
      MEGURO, Toshio
    • 雑誌名

      Nilo-Ethiopian Studies

      巻: 22 ページ: 27-39

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] アフリカにおける「住民参加型観光」の再検討―地域社会の視点から2017

    • 著者名/発表者名
      丸山淳子・目黒紀夫
    • 雑誌名

      アフリカ研究

      巻: 92 ページ: 19-25

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「万能薬」ではなく「サプリ」として―ケニア南部に暮らすマサイにとっての観光の意味2017

    • 著者名/発表者名
      目黒紀夫
    • 雑誌名

      アフリカ研究

      巻: 92 ページ: 83-94

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「伝統」を見せ物に「苦境」で稼ぐ―「マサイ」民族文化観光の新たな展開―2017

    • 著者名/発表者名
      中村香子
    • 雑誌名

      アフリカ研究

      巻: 92 ページ: 69-81

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ボツワナ中西部における「ブッシュマン観光」の成立と展開:観光と地域の社会関係のダイナミズム2017

    • 著者名/発表者名
      丸山淳子
    • 雑誌名

      アフリカ研究

      巻: 92 ページ: 55-68

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] カラハリ砂漠の子育てに学ぶ2018

    • 著者名/発表者名
      丸山淳子
    • 学会等名
      よこはま国際フォーラム
    • 招待講演
  • [学会発表] Continuous Land Loss: Wildlife Management Area in Tanzania as Green Grab2017

    • 著者名/発表者名
      IWAI Yukino
    • 学会等名
      France-Japan Area Studies Forum: Voices for The Future: African Area Studies in a Globalizing Worl
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] アフリカゾウ追い払いにおける官民連携と駆け引き:タンザニアの事例2017

    • 著者名/発表者名
      岩井雪乃
    • 学会等名
      第23回「野生生物と社会」学会大会
  • [学会発表] Gaps between the Innovativeness of the Maasai Olympics and the Positionings of Maasai Warriors2017

    • 著者名/発表者名
      MEGURO, Toshio
    • 学会等名
      ECAS7 (the 7th European Conference on African Studies)
    • 国際学会
  • [学会発表] 民間組織による「コミュニティ保護区」設立の意図―ケニアの事例2017

    • 著者名/発表者名
      目黒紀夫
    • 学会等名
      第23回「野生生物と社会」学会大会
  • [学会発表] 「マサイ」をめぐる表象の重層性―ケニアの牧畜民サンブルの「民族衣装」の新展開―2017

    • 著者名/発表者名
      中村香子
    • 学会等名
      日本文化人類学会第51回研究大会
  • [学会発表] ボツワナにおける「ブッシュマン観光」の成立とその展開2017

    • 著者名/発表者名
      丸山淳子
    • 学会等名
      日本アフリカ学会第54回学術大会
  • [学会発表] 先住民の法廷闘争と遊動生活:ボツワナのサンを事例に2017

    • 著者名/発表者名
      丸山淳子
    • 学会等名
      シンポジウム:先住民族と法:―文化人類学、憲法学、国際法学の立場から
    • 招待講演
  • [学会発表] Divided Land, Shared Land: Recent Land Issues among the San Hunter-Gatherers in Central Kalahari2017

    • 著者名/発表者名
      Maruyama, Junko
    • 学会等名
      African Forum: African Potentials to Develop Alternative Methods of Addressing Global Issues,
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Nature conservation, land access and economic disparities among the San hunter-gathers in Southern Africa2017

    • 著者名/発表者名
      Maruyama, Junko
    • 学会等名
      France-Japan Area Studies Forum: Voices for the Future: African Area Studies in a Globalizing World
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 先住民からみる現代世界2018

    • 著者名/発表者名
      深山直子、丸山淳子、木村真希子
    • 総ページ数
      288
    • 出版者
      昭和堂
    • ISBN
      9784812216408
  • [図書] ぼくの村がゾウに襲われるわけ。-野生動物と共存するってどんなこと?2017

    • 著者名/発表者名
      岩井雪乃
    • 総ページ数
      136
    • 出版者
      合同出版
    • ISBN
      4772613161
  • [図書] 社会問題と出会う(FENICS100万人のフィールドワーカーシリーズ 7)2017

    • 著者名/発表者名
      白石壮一郎、椎野若菜、目黒紀夫、村尾るみこ、清水貴夫、横田祥子、福島万紀、碇陽子、丸山淳子、白波瀬達也、川端浩平、安岡健一
    • 総ページ数
      216
    • 出版者
      古今書院
    • ISBN
      978-4772271288
  • [図書] アフリカ2017

    • 著者名/発表者名
      島田周平、上田元、成澤徳子、水野一晴、遠藤聡子、池谷和信、寺谷亮司、佐川徹、松村圭一郎、佐藤廉也、藤岡悠一郎、丸山淳子、伊藤千尋、小川さやか、大門碧、遠藤貢、福西隆弘、西浦昭雄、吉田栄一、目黒紀夫、荒木美奈子、松本尚之
    • 総ページ数
      176
    • 出版者
      朝倉書店
    • ISBN
      978-4254169287
  • [備考] セレンゲティの猟師の涙:失われる罠の技

  • [備考] 懐中電灯とソーラーパネルを寄贈!スキルアップした追い払い

    • URL

      http://afric-africa.vis.ne.jp/projects/beehive015.htm

  • [備考] ゾウ追い払いの新兵器の爆竹器を寄贈!行政から公的支援も開始!

    • URL

      http://afric-africa.vis.ne.jp/projects/beehive014.htm

  • [備考] アフリカゾウを追い払う困難さ

    • URL

      http://afric-africa.vis.ne.jp/projects/beehive013.htm

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi