研究課題/領域番号 |
17H01939
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
堀 史郎 福岡大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10532814)
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研究分担者 |
藤田 敏之 九州大学, 経済学研究院, 教授 (30297618)
高村 ゆかり 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70303518)
蟹江 憲史 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 教授 (90326463)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 気候変動 / パリ協定 / 実効性 / 自己拘束性 / 規範 / 非国家主体 / ガバナンス |
研究実績の概要 |
2017年度は、研究代表者、分担者、協力者が会合して研究計画の確認を行い、予定していた研究課題の分析を進めた。 第一の研究課題である、自主的な取組における加盟国の自己拘束性を高める措置については、ゲーム理論を用い加盟国の協力を促進する技術支援の効果を調べた。1つの先進国と1つの途上国がプレイヤーとなるゲームを設定し、2国間クレジット制度に類似した技術協力が、クレジット認証率が十分大きいという条件のもとでは,両国の均衡における削減量も増加させ、さらに総厚生を高めるという結果を得た。 第二の研究課題について、気候変動枠組み条約と他のレジームとのインターフェイス、規範化の有効性について分析を進めた。具体的には、パリ協定とその実施ルールの有効性、ビジネス主体の気候変動対策の有効性、SDGsなど目標ベースのガバナンスの有効性についての分析を行った。結果、①パリ協定の構造上、各国の実施の実効性については、パリ協定という国際制度と自治体や都市、ビジネスなどの非国家主体による取り組みの促進の間に相乗効果が見られ、パリ協定後の気候変動対策に特徴的な現象となっていることが明らかになった。②ビジネスの主体についての取組においては、ビジネス関係者のヒアリング、文献調査から、国際的なビジネス合意や枠組みが、インセンテイブ、信頼性、市場を踏まえた規範性を持つように進化していることがわかった。③「目標ベースのガバナンス」に関しては、同ガバナンスへの期待や可能性を同定した。また、国際気候変動レジームとSDGsとの親和性や対立可能性のある点などについてのサーベイを行い、さらなる検討を行うための実証研究のためのケース研究地域を検討した。④中国の気候変動政策の変遷を分析し、国際交渉や社会的な動向が気候変動政策に大きく影響していることを確認した。この結果は、研究論文、学会発表、図書の発行を通じて発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度においては、研究代表者、分担者、協力者による、研究計画の確認を行い、各研究担当者における研究課題の分析を進めるとともに、企業や他の研究機関とのワークショップによって社会的課題や他の研究の進捗状況の議論を行うことによって、研究成果の社会的課題との整合性について確認した, ワークショップは、6月の全体会合、12月の技術支援や中国の気候変動政策の検討会合、2月の企業関係者を交えた検討会合、同じく技術支援の実施やグループモデルについての気候変動関係者を交えた検討会合などを行い、特に、技術支援の定式化に必要な他の環境条約における技術支援の実施形態、中国の気候変動政策の分析に不可欠な石炭政策、省エネルギー政策の分析成果、業界別のビジネスの気候変動の取組と規範化の考え方についての整理や意見交換を行った。 ゲーム理論における研究については、海外でのゲーム理論研究の動向、特に技術変化、資金譲渡が国際環境協定に与える影響の研究成果について他の研究機関と意見交換を行った。パリ協定の実施の有効性については、日本の気候変動・エネルギー法政策についての調査、分析を行った。「目標ベースのガバナンス」の諸側面について、企業や自治体を中心とするステークホルダーとの意見交換を行った。これらの調査を踏まえた分析結果は、学会、シンポジウム、などで発信しており、おおむね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、昨年度の分析結果、及び、実務関係者とのワークショップを通じて指摘があった事項を踏まえ、引き続き社会的課題にリンクした研究分析となるよう、関係者との議論や社会調査も踏まえながら進めていく。 自己拘束性を高める措置については、29年度に途上国と先進国の2グループモデルによって技術支援が有効となることを確認し、気候変動技術メカニズム(TEC,CTCN)の関係者との議論においてレビューや技術支援のメカニズム、定式化、グループモデルの作り方などの指摘が出された。30年度は、これを踏まえて、両タイプの国が複数存在する協定の自己拘束性が技術支援によってどのように変化するかを検証するとともに、レビュー制度の定式化などを行う。 気候変動枠組み条約と他のレジームとのインターフェイス、規範の有効性については、パリ協定の詳細ルールの決定をにらみ、分析調査を行って行く。まず、詳細ルールの策定交渉とCOP24における合意予定のルールの分析を行い、その実効性を検討する。SDGsなどの目標ベースのガバナンスとパリ協定を比較し、パリ協定が目標ベースのガバナンスにシフトしているかどうか分析する。パリ協定で強調されている非国家主体、特にビジネスにおける気候変動対策の規範性について、企業への社会調査を通じて明らかにしていく。 さらに、調査分析結果を広く関係者に共有するため、秋のWSSF(world social science forum)で特別セッションを設けて研究成果の報告を行うと共に、書籍の出版などを通じて広く発信していく。
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