研究課題/領域番号 |
17H01945
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大渕 慶史 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (10176993)
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研究分担者 |
飯田 晴彦 崇城大学, 芸術学部, 教授 (10448516)
坂本 英俊 同志社大学, 理工学部, 教授 (10153917)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 工業デザイン / プロダクトデザイン / ユニバーサルデザイン / 複合材料 / CFRP |
研究実績の概要 |
(1)材料と工法の検討 剛構造および柔構造の両方が求められるデザインに対して柔軟な適用を可能にするため,CFRPの製品に求められる強度および弾性・剛性に関して影響するパラメータを抽出した.ここで重要なのは単に強高強度を目指すのではなく,樹脂材料の特徴である柔軟性と広範囲に変化する異方性を制御することを可能にして,それを積極的にデザインに利用することも視野に入れた.積層構造と樹脂の組み合わせ,それに加えて工法を変化させた様々な板状の試験片を作成し,実験により広範囲に変化する材料特性の関係を詳細に求めた.材料特性についての計測・評価法の検討も行い,それらの成果を国際会議にて発表した.さらに,単純形状の板構造だけではなく,複雑な構造における挙動を観察するため,繊維の方向の組み合わせと工法を変化させたパイプ状の試験片を製作している. (2)解析手法の検討と確立 CFRPの複雑な積層構造はその材料特性の評価を非常に難しいため,モデリングやシミュレーションも難しくしている.本研究では実験による材料特性の評価とシミュレーションによる材料の変形状態,応力状態などの再現が必須であった.そこで積層構造を有効に再現する簡易モデルを提案し,強度と弾性(剛性や柔軟性)を単純なモデルで短時間に評価できる手法による再現精度について,実験との比較により検証した.これらのモデリング手法と解析による板材及び構造体の強度と弾性の評価手法を検討した.簡易モデルによるシミュレーションで様々な形状や構造に対しての挙動を求め,それらの成果を国際会議にて公表した. (3)人体および機器の動作解析 主な対象として車椅子の他,人体適合性のあるプロダクトを想定しているが,人体と対象物の動作の解析のため,既存のモーションキャプチャと筋電位計測装置により高齢者用椅子の評価を開始した.成果の一部は国際会議にて公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度である平成29年8月までに事前準備,計測・評価法の検討を行い,平成30年3月までに解析手法の検討,実験材料と工法の検討,各種パラメータによる実験と解析,評価パラメータの抽出を行う予定であったが,研究分担者の不測の病気により,大幅に遅延が生じ,実験材料の詳細決定が遅れることになった.平成30年中に板状試験片に対して実験とシミュレーションの比較を行ったが,試験片製作時に指定した積層の対称構造が簡易モデルに考慮されておらず,一部の実験結果とシミュレーション結果が異なることが明らかになったため,非対称構造の試験片を再度制作した.また,パイプ状の構造の試験片の製作については,依頼したメーカー側で工法の検討に時間を要したため,製作が終わった段階であり,実験が終了していない.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に遅れが生じている部分である,複合材料の強度評価手法の検討と解析手法の確立について引き続き実施する. 上記と並行してデザイン要素の検討を行う.日常生活に必要な製品のデザイン要素としては,製品の使いやすさ,人体的適応,疲労などを含む生物学的特性,人間の欲求・価値観・生活意 識・満足感などの心理的特性,機構・構造・材料などの技術的要素,経済・社会・生活・環境などの社会的要素があるが,現段階においては技術的要素について検討する.技術的要素の中で,特に構造については効果的なスタイリングの要素ともなるため,剛性・柔軟性のほか,機動性や操作性などの機能を実現する構造の実現のために,単純な板形状だけではなく,中空パイプ形状,リブ構造,ボックス構造,折り構造などについて,一部はモデル試験片を製作してシミュレーションと並行した評価を行なう. デザイン要素の評価項目としては,特に形状の強度と柔軟性について明らかにする.今回のデザイン対象は,アウトドア用車椅子を主な対象としているが,応用としては人体に適合して使用感や快適さを生むプロダクトであり,寝具,家具,小型モバイル,レジャー・スポーツ用品など,その形状や要とも幅広い.これらは単に高強度であれば良いわけではなく,変形や柔軟性,人体適合性の評価が重要であり,これが後述の心理的要素に大きく影響してくる.また,この点を重要なデザイン要素として十分に活用できれば,デザインの可能性が大きく広がる.したがって,構造によるスタイリング的要素材料と構造による剛性や柔軟性の要素に着目し,そのそれぞれの要素について詳細解析を行ない,評価パラメータを決定する. また,人体適合性の評価として,人体と対象物の動作のより詳細な解析のため,モーションキャプチャと3次元動作解析ソフトにより,詳細な分析を行ない,人体適合性の評価指標を獲得したい.
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