研究課題/領域番号 |
17H01945
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大渕 慶史 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (10176993)
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研究分担者 |
飯田 晴彦 崇城大学, 芸術学部, 教授 (10448516)
坂本 英俊 同志社大学, 理工学部, 教授 (10153917)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 工業デザイン / プロダクトデザイン / ユニバーサルデザイン / 複合材料 / CFRP |
研究実績の概要 |
(1)対象とする屋外用車椅子の機能および構造の検討 研究開始時には対象を障がい者を主に想定していたが,我が国の高齢社会を考え,QOLの充実のためには足の弱った高齢者が積極的に屋外で活動できる機能が効果的であるとの考えに至った.開発する車椅子には高齢者が最も必要とする立ち上がり動作支援機能をもたせること,および屋外の長距離を電動で走破する緩衝機能を付加する事を目的の主に置き,それを実現する機能と構造を検討した結果,剛構造フレームに立上り機構を付加した座面を持つ案と,モノコック剛構造の座面にサスペンション機能としての柔構造フレームを持つ案の,2つの異なるコンセプトでの屋外用車椅子を提案した.前者については複数の立上り支援機構を提案し,国内学会および国際会議にて公表したほか,その機能評価については国際論文での公表を行うことが出来た. (2) 製作方法の検討と試作 デザイナーにより提案されたモノコックフォルムに対し製品に必要な構造を決定し,製作手法・工法を検討し確立する必要が有った.工法により強度や柔軟性は大きく影響を受けるが,オートクレーブ(圧力釜)工法は自由度が少なく高コストであるため除外し,真空成型法や手作業で積層するハンドレイアップが製品の形状や構造の自由度が非常に高いため主な候補とした.更に中空構造やリブ構造など,一体成型で製作が出来ないような形状も作成することが可能であったため,複数の構造での試作を行った.試作の前段階においてはモデリングとシミュレーション評価により製品化の可能性を確認し,予算的な制限も考慮して,発泡樹脂を芯材としたGFRP製の剛構造フレームを試作し,強度評価まで行った.この結果は国内学会で発表した.また,GFRP製の剛構造モノコック座面を試作し,モノコック座面については形状が確定したため,最終的にCFRP材による試作品も製作した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和元年7月までに,要求機能および形状と構造の検討,要求機能および形状と構造の評価を行い,令和2年3月までに,製作工法・手法の検討,製作工法・手法の評価のための試作,製品評価手法の検討,製品化の可能性の検討を行う予定であった.しかし,要求機能および形状と構造の評価の結果,福祉機器の開発・設計に携わる専門家から,デザイン対象であるアウトドア用車椅子の立ち上がり補助に対する機能の不十分さを指摘されたことにより,構造上の変更が必要であることが判明した.研究遂行上,構造の最適化とその機能の検証が不可欠なため,研究計画を見直し,補助機能としての構造の再評価を得る必要が生じた. 令和元年度の研究計画で当初予定していたアウトドア用車椅子の緩衝機能,および立ち上がり補助に対する機能を検討し,複数の構造を提案する必要があった.立ち上がり補助機能については評価することができたが,それらの検討にも時間を要したため,緩衝機能を実現する構造,および,製作工法・手法の検討,製作工法・手法の評価のための試作,製品評価手法の検討,製品化の可能性の検討については,以降に実施する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
計画に遅れが生じている,緩衝機能を実現する構造,および製作工法・手法の検討と評価のための試作,製品評価手法の検討について,以下のように実施する. (1)対象とする屋外用車椅子の緩衝機能および構造の検討 デザイナーによるモノコック構造のフォルムに対し,緩衝機能を有するフレーム構造を提案し,評価を行う.製品に必要な機能を実現する形状と構造が決定した次の段階では,試作と評価により,実際に製作する手法・工法を検討し確立する必要が有る. 車椅子は個人用途であるため,コスト面を重要視する必要が有り,自由度が少なく高コストである大量生産用の成形型を使用することは出来ない.真空成型法や手作業で積層するハンドレイアップが候補として挙げられるが,オーダーメイド的な寸法変更も要求項目であるため,板形状の素材からの切り出し部品の組み立てによる製作方法を検討する. (2) 人間評価・感性評価のための計測手法の確立と製品評価 プロダクトデザインの成功においては,デザイン要素の中でも特に使用感を評価することが重要となる.そのために,人間工学的な評価を行い,フィードバックすることで製品デザインを向上させるプロセスが必要となる.ここで言う人間工学は身体的な計測と評価を意味する.機動性や操作性などの動作的な機能,および人体と製品の適合性や柔軟性などの使用感の評価としてモーションキャプチャを用いた動作解析を利用する.これにより,使用者の動きや筋電位の変化などを製品のパラメータやデザイン要素に対して比較することにより,製品の使用感や快適さの評価を行うことを試みる.また筋力の評価のためには筋電位の計測により評価する.しかし,柔軟性を持ち変形可能な製品の動作時の身体とのかかわり,操作性や機動性などに関しては動画のみでは評価が難しいため,動作の詳細な記録と分析に加え,使用者による実際の使用感についての評価方法の開発も必要である.
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