最終年度として,屋外用電動車椅子の緩衝機能を実現する構造と製作工法・手法の検討,評価のための試作について以下のように実施した. 緩衝機能と構造の検討として,デザイナーによるモノコック構造の座面フォルムに対し,独自のフレーム構造を提案し,CAE解析による性能評価を行うことで製品に必要な機能を実現する形状と構造を決定した.車椅子は個人用途であるためコスト面が重要視され,またオーダーメイド的な寸法変更も要求項目であるため,自由度が少なく高コストである大量生産用の成形型は使用できない.製造の容易さとコスト低減の両面を実現するため,板材をカットした部材の接合で製作する構造を採用した.実際の製作手法・工法の検討のための試作と評価により板材カットにはウォータージェットを使用,部材の接合として蝶番接合,直接接着,接合部材を介した接着法を試行し,短寸法のCFRP製接合部材を介する方法を採用した. 次に機能評価・感性評価のための計測手法の確立と製品評価を行った.プロダクトデザインの成功には使用感の評価が重要となるため,人体と製品の適合性や柔軟性などの使用感の評価としてモーションキャプチャと筋電維新號を用いて,脚の弱った高齢者の立ち上がり支援機能を複合した試作品での評価を行った.柔軟性を持ち変形可能な製品の動作時の身体との関わり,操作性や機動性などに関しては,動作の詳細な記録と分析に加え,被験者による実際の使用感についての評価も試行したが,時間的制約のため充分な数の被験者に対する評価は実現できなかった. 以上の成果は学会での口頭発表12件(うち国際会議5件)で公開した.しかし,感染症の影響による原材料価格の高騰により,製品試作に必要な基材の入手が困難となったため,検討した個々の成果を総合した最終形状についての製作が実現せず,最終製品の完成と評価が課題として残され,論文公開までは至ることが出来なかった.
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