研究課題/領域番号 |
17H01948
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
古賀 元也 崇城大学, 工学部, 准教授 (30635628)
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研究分担者 |
松原 誠仁 熊本保健科学大学, 保健科学部, 准教授 (60515782)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 車いす使用者 / まちなか回遊支援 / ワークショップ / まちづくり / 身障者支援 / 支援ツール / アプリ / 車いすナビ |
研究実績の概要 |
中心市街地の衰退と質の低下の問題を解決するためには,健常者だけでなく,交通弱者である身障者,お年寄り,妊婦なども含めたすべての主体が,安全にまちなか活動を楽しめるような魅力のあるまちづくりに取り組んでいかなければならない。我々は,熊本市中心市街地を対象に車いす使用者がまちなか活動を楽しむことのできる福祉のまちづくりに取り組んできている。今年度の研究は以下の2点を中心に取り組んだ。 Ⅰ.熊本市中心市街地における店舗のバリアフリー整備状況と利用補助に関する調査:中心市街地において車いす使用者が快適に買い物や食事を楽しむことができているのか,その実態を明らかにすること,そしてこれらの情報を共有すること目的とし,対象地の店舗のバリアフリー整備状況や利用補助の実態をアンケートおよび実測調査を実施した。アンケートは754店舗を調査対象とし,391店舗の回答があった。調査項目は①お店のトイレのタイプ,②店舗の利用状況,③事前連絡が必要か,④お店のサポートの有無,⑤車いすで利用できる席があるか,⑥お店の出入口のタイプ,⑦店舗を訪れる際の段差の有無,⑧店舗内の段差の有無と最小の段差を計測,⑨エレベーターの有無とした。調査対象のうち,車いす使用者が店内をひとりで利用できる店舗は137店舗(35%)あり,介助者がいた場合は286店舗(69%)でいつでも利用できることがわかった。また,324店舗(90%)が店舗の店員からサポートを受けることができることが分かった。 Ⅱ.車いす使用者のまちなか回遊支援アプリ『車いすナビ』の改良と有用性の検証:上記の調査結果を車いす使用者のまちなか活動を支援するアプリ『車いすナビ』に反映させ,店舗へのアクセスや利用補助の有無を検索できる機能を追加した。またアプリのインターフェイスの改良,操作性の向上に取り組み,実証実験ワークショップの実施によってアプリの有用性を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題は,当初の予定より早く車いすナビゲーション・システムを実用化しており,iPhone版アプリ「車いすナビ」を平成30年度にリリースし,車いす使用者が参加する実証実験ワークショップを通じてその有用性と問題点・課題を明らかにした。今年度は,課題として挙げられた店舗情報の充実を中心として「車いすナビ」の改良に取り組んだ。 このアプリは熊本市中心市街地(約59.48ha)を対象としており,通り数は402本(歩道202本,車道200本)であり,ノード(交差点など)とリンク(通りなど)で構成されている。検索対象は,①身障者用トイレ,②駐車場,③飲食店や洋服屋などの店舗で,ユーザーの現在地から検索対象の施設までの経路を案内する。身障者用トイレ,駐車場についてはフィルター機能を用いてタイプ別で表示をすることができ,店舗については,店名で検索可能である。今回の改良では,検索機能の向上(予測検索機能の追加)や店舗に関してバリアフリー情報や身障者が店舗から受けることができるサポート(階段の上り下りなど)などが加わった。また全体的にインターフェイスを改良することで操作性が向上しており,実証実験やワークショップにおける検討で有用性が確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,これまで蓄積してきた車いす使用者の通り評価,店舗のバリアフリー状況等の調査結果の整理,分析に取り組む。また,6年に渡り実施してきたワークショップでの意見交換や実証実験でのアプリに対する評価を整理し,分析する。加えて,通り評価による経路探索の特徴を分析,考察する。これらの成果を踏まえて,システムの改良および,車いす使用者だけでなく,お年寄りやベビーカーなどの交通弱者に対する支援の在り方の検討に取り組む。
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