研究課題/領域番号 |
17H01956
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
黒子 弘道 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (20221228)
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研究分担者 |
曽根 正人 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30323752)
才脇 直樹 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (20252637)
佐藤 克成 奈良女子大学, 生活環境科学系, 講師 (00708381)
チャン ツォーフーマーク 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (10647069)
橋本 朋子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 助教 (10589930)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 被服材料 / ウェアラブルシステム |
研究実績の概要 |
素材チームは、前年度に引き続き、超臨界二酸化炭素を用いてシルク、ポリエチレンテレフタレート(PET)、綿の上に白金およびニッケル-リンを欠陥無く被覆し、更に貴金属被覆したシルク材料に更なる機能を与える様々なセラミックスを被覆する技術の確立を目指して研究を行った。主な成果は、PET繊維のメタライゼーションを実現したことが挙げられる。 解析チームは、上記めっき繊維について固体NMR及び量子化学計算を用いて、めっき金属がどのように繊維分子と相互作用をしているかについての知見を得た。また、触媒化糸が織り込まれた布に対してめっき処理を行うための試料として、撚り合わせた触媒化ナイロン糸を用いて、その露出間隔や表裏の露出状態を変え作製した織布を得た。基布となる緯糸、および触媒化ナイロン以外の経糸には、導電性糸との区別のためポリエステルを用いた。得られた織布さらに、ナイロン、およびポリエステルの繊維材料の生体親和性指標として水との相互作用に着目し、各試料の水接触角を調べた。 応用チームは、昨年度に引き続き、導電性繊維の温度刺激素子としての応用を検討した。その一例として、ぬいぐるみに体温を付与するぬいぐるみ服が、使用者の向社会性が向上するなどの効果をもたらすことを確認した。さらに視覚障碍者の支援として、障害物の有無を温冷刺激により通知するシステムを提案、基礎的な検討から有効性を示した。さらに、導電性のスマートテキスタイルを用いて、身体の運動(呼吸に伴う胸郭の上下動や上腕などの関節動)計測可能なウェアやサポータを開発した。また、それらの精度や実用性を評価する実験に取り組んだ。ウェアについては、医療用の呼吸計測装置と同等に呼吸周期を取得可能である事が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
素材チーム、応用チームについてはおおむね順調に進展しており、解析チームはやや遅れているが、本研究課題全体としてはおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
素材チームは今年度に引き続き、超臨界二酸化炭素を用いて、シルク、PET、綿の上に白金あるいはニッケル-リンを欠陥無く被覆する技術の確立を継続して行う。また、センサアプリケーションのためのメタライズPETと触媒材料センサー用途の触媒材料の統合も検討する。また、金属を欠陥無く被覆したハイブリッド材料に更なる機能を与える様々なセラミックスを被覆する技術の確立を行う。新たに触媒化した繊維をめっき処理をする前に布にパターンを形成して織り込み、その後超臨界二酸化炭素めっき処理をした素材の作成を試みる。 解析チームは、引き続き金属と繊維との相互作用を含めた高次構造を固体NMRおよび金属を扱うため有効内殻ポテンシャル(ECP)を用いた量子化学計算により明らかにする。これにより、金属がめっきされた際の繊維の高次構造変化を解明し物性の変化と対応させ、性能の改善のための指針とする。また、触媒糸を用い作製した織布のめっき処理により得られた導電性糸含有布の導電性や強度、風合いなど、各特性評価を行う。また、得られた導電性糸を含む各織布の生体親和性評価を多角的に進める。 応用チームは引き続き、本研究で開発された新素材を用いて同種のウェア等を製作し、評価を行って実用化を進める。また計測時に生じるノイズの除去方法や着装する個人による体格差で生じる誤差も含めたキャリブレーションなどについて検討を進め、計測精度を高める。さらに次年度の前半は、安定した冷刺激が可能な柔軟なデバイスの構築に取り組む。導電性繊維の伝熱特性に着目し、フレキシブルペルチェ素子の放熱部として活用し得るか検討する。後半は、障害物の存在を温冷刺激により伝える視覚障碍者支援システムの有効性について検証する。提案システムをウェアラブルデバイスとして実装し、歩行中や静止時に接近してくる障害物の向きと距離を、温冷刺激により知覚できることを示す。
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