研究課題/領域番号 |
17H01958
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
村田 容常 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (60210051)
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研究分担者 |
寺沢 なお子 金沢大学, 人間科学系, 教授 (00227513)
筒浦 さとみ 新潟大学, 研究推進機構, 特任助教 (20708622)
島村 裕子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (60452025)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メイラード反応 |
研究実績の概要 |
アクリルアミド(アスパラギンと糖のメイラード反応により生成する遺伝毒性発がん物質)の分析と生成条件を検討した。炒める加熱時間が長くなるにつれ褐変度は上昇し、アクリルアミド量も増えた。基質となるアスパラギンおよび還元当量も測定した。また学生数名位に任意に炒めてもらったもやし中のアクリルアミド量を定量した。ばらつきが大きく炒め方の個人差が大きいことが明らかになった。 納豆菌によるピラジン類の生成について検討した。合成培地に種々の成分(アミノ酸やビタミンなど)を添加してピラジンの生成を調べたが、生育自体がアミノ酸の影響を受け、はっきしりした結果は得られなかった。 組成をコントロールしたモデルプロセスチーズを作成し、その褐変度を調べた。その結果、ガラクトース量が褐変度に最も寄与したが、使用した乳化剤の種類やpHも影響した。 システイン系メイラード反応で生成する新規メイラード色素pyrrolothiazolateを、DAD-HPLCおよびLC-MSで分析し、醤油、味噌、ビールに存在することを明らかにした。醤油の種類で比較すると、色の濃いたまり醤油で存在量が多く、色の薄い醤油で少なかった。また、Ames試験に供し、変異原性を調べたが、代謝活性化の有無に関わらず変異原性を示さなかった。また、システイン系メイラード反応で生成する未知色素を検出したためその単離を試みたが、不安定なため解析できなかった。還元処理を行ったが安定性は改善されなかった。 チアミン由来の新規メイラード色素pyrizepineの生成経路を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクリルアミドに関しては、分析法の確立後、各種もやし試料を順調に分析している。チーズの貯蔵褐変に関しては、その原因をより詳細に解明するとともに制御法を提案するため、成分の組成を特定したモデルプロセスチーズを作成し貯蔵褐変を調べた。その結果、ガラクトースが最も大きく寄与することを確認したほか、他の要因も関与することを明らかにできた。また、システイン系メイラード反応で生成する新規メイラード色素pyrrolothiazolateを各種醤油、味噌、ビールで検出し、実際の食品に存在することを明らかにした。本物質をAmes試験に供し、変異原性を調べたが陰性であり、安全性上問題がないことを確認した。一方、納豆のピラジン生成研究は前駆体と考えられるアミノ酸自体で生育阻害が認められクリアーな結果が出ていない。また、システイン系メイラード反応で生成する未知メイラード色素を単離・構造解析しようと試みたが不安定なため断念した。一部うまくいかなかったが総じて順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度として取りまとめ、投稿論文を作成する。アクリルアミドに関しては、もやしの前処理条件を検討して、炒めもやし中のアクリルアミド量を減少させる方策を提案したい。さらに多くの人に任意にもやしを炒めてもらいアクリルアミド量を測定して評価したい。ビールに関しては、同定したperrolyrineがビール製造のどの段階で形成されるかを明らかにする。別の実験でコーヒーが低酸性下で殺菌力を持つことを明らかにした。この殺菌効果に対するメイラード反応生成物の影響を調べてみたい。
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