研究課題/領域番号 |
17H01960
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
加藤 陽二 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (30305693)
|
研究分担者 |
石坂 朱里 兵庫県立大学, 環境人間学部, 助教 (30724463)
生城 真一 富山県立大学, 工学部, 教授 (50244679)
中村 宜督 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (60324381)
中村 俊之 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (90706988)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 蜂蜜 / 認証評価 / 生体利用性 / 成分分析 |
研究実績の概要 |
UHPLC多波長検出器を用い、HPLCによる分析に比べて1検体10分(測定時間比1/3)、感度はHPLC以上とする条件を構築し、国産蜂蜜及びニュージーランド産、モンゴル産などの蜂蜜を分析した。多くの国産蜂蜜で類似したピークが観測され、単一の花に由来する蜂蜜というラベルであっても実際にはマルチフローラル蜂蜜である可能性が示唆された。ただし、花蜜に共通して存在している成分によることも考えられ、更なる解析が必要である。一部の蜂蜜について、花蜜そのものを採取し、蜂蜜にその成分が含まれるか調べたところ、花蜜には存在するが、蜂蜜に含まれないピークも見つかった。蜂が巣箱に蜜を持ち帰り、貯蔵する間に、分解する成分もあることがわかった。また、液体クロマトグラフィー質量分析器(LC-MS/MS)による蜂蜜成分の解析を進めている。 生体利用性・機能性発現機構に関する検討では、マヌカ蜂蜜に豊富に含まれるレプトスペリン及びメチルシリンゲートの代謝について、マウスや腸・肝臓由来の培養細胞を用いた検討を進めた。マウスでは蜂蜜投与群とレプトスペリンあるいはメチルシリンゲート投与群に代謝速度やプロファイルに違いが認められた。の培養細胞による検討からは、メチルシリンゲートのメチルエステルが切断されてシリング酸を生じることがわかり、阻害剤や精製酵素を用いた検討から、カルボキシルエステラーゼ1(CES1)がその反応を媒介していることがわかった。シリング酸には種々の機能性が報告されており、蜂蜜摂取に伴う健康増進に役立っている可能性がある。 二次産品における成分変化についても、予備的な検討を開始しており、加温・加熱に伴い、特定の成分が減少することが示唆された。一方で、安定な成分もあり、添加した蜂蜜の量を保証する指標(マーカー)として有用となることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成分分析については、希少なモンゴル産の蜂蜜やニュージーランド産蜂蜜、国産蜂蜜などを試料とし、UHPLC多波長検出器を用いた解析を進め、成果も得られつつある。質量分析による網羅的な解析法の構築が予定より遅れているものの、その他については、特に大きな問題もなく順調に進展している。このUHPLC及び質量分析器を利用して加温・加熱に関わる成分変化を予定よりも前倒しで進めており、今年度、学会発表予定である。 マウスや培養細胞を用いた代謝研究についても、予定よりも進んでいる。中でも培養細胞による検討から、肝臓の細胞ではメチルシリンゲートのみが代謝され、他の成分はほとんど変化しないことがわかった。またメチルシリンゲートの代謝に伴い,メチルシリンゲートの硫酸抱合体やグルクロン酸抱合体に加えシリング酸が生じるが、シリング酸は抱合反応を受けにくいこともわかり、体内における滞留時間が長くなることが予想された。シリング酸はいくつかの機能性が示唆されている分子であり、メチルシリンゲートやその配糖体であるレプトスペリンの機能性が、シリング酸を介して発揮されている可能性が示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
UHPLC多波長検出器や質量分析器を用いて、国内外のハチミツの多成分分析・解析を実施し、データを蓄積する。百花蜜が多い国産ハチミツは成分が複雑であることが予想されることから、主成分分析法に加えて独自の解析手法を検討する。また、フラボノイドに対する特異抗体を利用した免疫化学的な手法も用いて、多検体処理の効率化を図る。 ハチミツに含まれる機能性成分の代謝解析では、マヌカハチミツに豊富に含まれるレプトスペリンとそのアグリコンであるメチルシリンゲートの代謝の検討を進める。メチルシリンゲートの硫酸及びグルクロン酸抱合体の機能性についても調べる。メチルシリンゲートに対するエステラーゼの特異的な作用も見出されたことから、特に産物であるシリング酸に焦点をあてて解析を進める。マウスを用いて、標品あるいはハチミツそのものを投与し、体内の代謝物の検出定量及びその動態解析を詳細に行う。腸内細菌叢に与える影響について、尿中のインドキル硫酸、糞便中の短鎖脂肪酸、腸内細菌由来のDNAを調べて明らかにする。また、最終年度では、ヒト試験(日常的なハチミツ摂取量)による代謝、機能性や腸内細菌叢に与える影響についてを確認したい。 Caco-2、HepG2、RAW細胞株を用いて、分子・細胞レベルでの代謝・機能性を解析する。また、ハチミツに含まれるフラボノイドなどのフィトケミカルや、マヌカハチミツに豊富に含まれるメチルグリオキサールは生体異物でもある点に着目し、これら反応性に富む成分による細胞応答についても分子生物学及び生化学的手法により検討する。 ハチミツの二次産品に焦点をあて、商品にどの程度のハチミツが添加されたのか「成分量で認証」する仕組みを構築する。飴などの試作を行い、加熱などの処理による成分の残存量(変化)を調べ、最終的には成分を損なわない加工調理法を提案したい。
|