研究課題
戦後の日本は食生活が激変し、その結果糖尿病をはじめとした生活習慣病が急増したと考えられている。特にカロリー摂取量と比較して、脂質摂取量が年々増加していることが厚生労働省の栄養調査によって明らかにされている。脂質、特に飽和脂肪酸が2型糖尿病発症において危険因子であるという報告は数多く見られるものの、その発症メカニズムについて十分に検討されたものは少ない。特に、欧米人と比較して明らかにBMIが低い日本人においては、インスリン分泌臓器である膵β細胞の脆弱性が以前から指摘されているが、脂質摂取と膵β細胞の脆弱性の関連について検討した報告はほとんど無い。また日本人の脂質摂取量が増加しているとはいえ、欧米人のそれとは比較にならないことは明白である。そこで代表者は、日本人の膵β細胞は特に脂質負荷において脆弱性を有するのではないか、という仮説を構築した。これまでに代表者は、高脂肪食負荷によって膵島におけるC/EBPβ発現が亢進することを見出している。また日本人において最も重要と言われる2型糖尿病感受性遺伝子、KCNQ1変異が膵β細胞不全を呈するメカニズムについても明らかにしている。本研究計画では、これらの研究成果をさらに発展させ、高脂肪食によって蓄積したC/EBPβがKCNQ1変異によって認められるp57発現をさらに増強させ、膵β細胞不全を引き起こす可能性について検証するものである。平成30年度において、代表者は高脂肪食負荷KCNQ1変異マウスと膵β細胞特異的p57ノックアウトマウスを交配し、高脂肪食を負荷したKCNQ1変異マウスの膵β細胞で増えたp57を欠損させたらどのように変化するか検討した。その結果、膵β細胞量は高脂肪食を負荷した野生型マウスと同等程度にまで回復することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
マウスを用いた実験系では、概ね全体的に良好な進捗状況となっている。現時点ではin vitroの実験系(培養細胞を用いた実験系)への着手が十分に出来ておらず、31年度は培養細胞の実験に取り組む予定である。
培養細胞やマウス個体を用いて、栄養成分(クロロゲン酸、γ-オリザノールなど)が膵β細胞にどのような影響を及ぼすかについての検討を行う。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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