研究課題/領域番号 |
17H01967
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
増山 律子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (60297596)
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研究分担者 |
山中 仁木 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (30533921)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カルシウム / ATP / 小腸 / リン / ビタミンD |
研究実績の概要 |
腸上皮には、摂取した食品成分の情報を感知し、独自に吸収調節する自律性が機能する。しかしながら、多くの食品成分の代謝に、自律性の吸収調節が関与しているにもかかわらず、その仕組みが腸管の「どこで」「どのように」機能するかは明確ではない。本研究では腸上皮が食品成分情報を感知してカルシウム吸収を調節する“自律性の吸収”の仕組みを明らかにする。 本申請研究の目的を達成するために、平成30年度は以下の検討を行った。 ① 昨年度の実験により小腸で自律性のカルシウム輸送機構が機能する時には、上皮細胞でのATP代謝(分解、放出)がダイナミックに変化することを見出した。そこで、このATP代謝が外液環境だけでなく、細胞の分化に応じて変化することを、腸上皮細胞を始め、様々な上皮細胞培養系により確認した。 ② GCaMP3- GFPマウスと、腸特異的VDR KOマウス (villin Cre-VDRfl/fl 腸上皮特異的にCreを発現、腸上皮ビタミンD作用を欠失)を交配し、自律性カルシウム吸収を蛍光可視化するモニターマウス(GCaMP3-GFP-villin Cre-VDRfl/fl)を作出した。 カルシウムが腸上皮細胞内を通過して能動的に吸収される機構は、ビタミンD作用に強く促進される。しかし、この吸収はあくまでもカルシウム要求に応じた「全身的な代謝制御」であり、本申請研究では除外する必要がある。腸上皮ビタミンD作用を欠失したモニターマウスのカルシウム蛍光は「自律性の吸収」を反映し、本申請研究で解明すべき吸収調節機構に基づいている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
小腸カルシウム吸収において、自律性の輸送機構を駆動させるためにはATP代謝が変化することが必要条件であることを本研究の初年度に確認されている。2年目には、小腸のどの部位で自律性輸送機構が活発に機能しているかを絞り込み、さらに、自律性カルシウム輸送を可視化できるモニターマウスを作出し、小腸の部位特異的なカルシウム輸送のイメージングへと発展させる予定であった。しかしながら、研究代表者の所属異動(長崎大学~立命館大学)により遺伝子組み換えマウス作出計画を大幅に変更せざるを得なくなり、モニターマウスの作出と、それを用いた部位の特定やイメージング実験は遂行不可能であった。これらの実験計画は次年度へと持ち越し実施する。
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今後の研究の推進方策 |
腸の「どこで」自律性のカルシウム輸送調節が行なわれるかを視覚的にとらえ、その仕組みは「どのように」制御されるかを明らかにする。① 昨年度から作出を開始している自律性カルシウム輸送を可視化するモニターマウスを用いて、腸管内での自律性機構が機能する部位を特定する。② 自律性機構を駆動させるための細胞内シグナルを特定するために、p53欠損マウス由来腸上皮細胞を用いた培養系にて、外液環境に応じた変化を評価する。③ モニターマウスを用いたオルガノイド培養に挑戦し、自律性輸送機能時の細胞内シグナルの特定を行う。 ビタミンD作用に促進されるカルシウム吸収は摂取カルシウム量の低下時に機能するため、食後やカルシウムを多く摂取した時には別のしくみによりカルシウムが吸収される筈である。本申請研究で作出する腸上皮ビタミンD作用を欠失したモニターマウスのカルシウム蛍光は「自律性の吸収」を反映し、本申請研究で解明すべき吸収調節機構に基づいている。
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