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2017 年度 実績報告書

神経系による食嗜好の制御メカニズムの解明;長寿遺伝子SIRT1に着眼して

研究課題

研究課題/領域番号 17H01971
研究機関群馬大学

研究代表者

佐々木 努  群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (50466687)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード栄養素嗜好性 / SIRT1 / FGF21 / オキシトシン / 脂肪酸
研究実績の概要

脳のSIRT1による炭水化物嗜好性の制御機序に関しては、Oxytocinの同受容体への作用が必須であった。そこで、Oxytocin神経特異的なSIRT1遺伝子組換えマウス(SIRT1増加マウスと欠損マウス)を作成し、栄養素嗜好性を検討した。その結果、Oxytocin神経特異的なSIRT1発現量の操作は、脂質嗜好性には影響を与えなかったが、炭水化物嗜好性は脳全体でのSIRT1操作マウスと同様の変化を示した。また、Oxytocin神経特異的なSIRT1増加マウスで認められたショ糖嗜好性の抑制効果は、Oxytocin受容体阻害剤の投与、および、薬理遺伝学によるOxytocin神経特異的な活性抑制により消失した。これらの結果から、Oxytocin神経のSIRT1がOxytocinの受容体への作用を介して、炭水化物嗜好性を制御していることを解明した。
次に、Oxytocin神経に炭水化物の摂取情報を伝えるシグナルを検討した。その結果、炭水化物摂取時に肝臓から分泌されるFGF21が脳内のOxytocin神経に作用し、炭水化物嗜好性を制御することを解明した。また、Oxytocin神経のSIRT1は、FGF21感受性を高めることで、上記のネガティブ・フィードバック制御を増強し、ショ糖嗜好性を抑制することを解明した。
FGF21のOxytocin神経に対する作用は、神経活性化とOxytocin遺伝子発現の誘導であった。そこでOxytocin遺伝子発現の誘導メカニズムを視床下部不死化細胞株で検討した。その結果、FGF21が転写因子NRF2を活性化しOxytocin発現を誘導すること、及び、SIRT1はFGF21のNRF2へのシグナルを増強することで、同作用を高めることを明らかにした。
さらに、脳特異的なSIRT1操作マウスで脂質嗜好性の変容を担う脂肪酸の探索を行い、初期データが得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

炭水化物嗜好性の制御機序に関しては、炭水化物摂取時に肝臓から分泌されるFGF21が脳内のOxytocin神経に作用し、炭水化物嗜好性を制御することを解明した。
また、Oxytocin神経のSIRT1は、FGF21感受性を高めることで、上記のネガティブ・フィードバック制御を増強し、ショ糖嗜好性を抑制することを解明した。
また、SIRT1による脂質嗜好性の制御機序に関しても、特定脂肪酸に対する嗜好性だけが変容している可能性を示唆する初期データを得られたため。

今後の研究の推進方策

炭水化物嗜好性のメカニズムに関しては、脳内神経回路の解析を進める。具体的には、oxytocin神経の投射先特異的なSIRT1遺伝子操作を、逆行性感染するウイルスベクターを用いて行い、炭水化物嗜好性に重要なOxytocin神経の投射経路を明らかにする。
脳のSIRT1による脂質嗜好性の解明については、特定の脂肪酸溶液に対する嗜好性の変化の再現性をまず確認する。そのうえで、その脂肪酸が作用する脳内部位の同定を試みる。また、脂質特異的な栄養素嗜好性の変化を担う神経活性物質やその受容体の脳内発現が、SIRT1依存性に変化するか探索し、脂質嗜好性の制御機序を担う候補分子を同定する。
これらの探索により、候補となる神経回路を見つけたら、同神経回路・神経細胞特異的なSIRT1発現量の操作を、遺伝子組換えマウスやウイルスベクターを用いて作出し、脂質嗜好性を検討して、仮説の妥当性を評価する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017

すべて 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [学会発表] FGF21によるオキシトシン発現制御機構の解析2017

    • 著者名/発表者名
      松居翔、佐々木努、橋本博美、河野大輔、小林雅樹、北村忠弘
    • 学会等名
      第90回日本内分泌学会 (2017)
  • [学会発表] Sirt1 regulates simple sugar selection through FGF21 and oxytocin.2017

    • 著者名/発表者名
      Matsui S, Sasaki T, Kohno D, Yokota-Hashimoto H, Kobayashi M, Kitamura T
    • 学会等名
      Keystone Symposia: Neuronal Control of Appetite, Metabolism and Weight (2017)
    • 国際学会
  • [学会発表] Sirt1 suppresses simple sugar preference by regulating oxytocin through NRF2.2017

    • 著者名/発表者名
      Sasaki T, Matsui S, Kohno D, Yokota-Hashimoto H, Kobayashi M, Kitamura T
    • 学会等名
      Keystone Symposia: Aging and Mechanisms of Aging-Related Disease (2017)
    • 国際学会
  • [学会発表] Sirt1 regulates simple sugar selection through FGF21 and oxytocin.2017

    • 著者名/発表者名
      Matsui S, Sasaki T, Kohno D, Yokota-Hashimoto H, Kobayashi M, Kitamura T
    • 学会等名
      The 41th Annual meeting of the Japan Neuroscience Society (2017)
  • [学会発表] 脳SIRT1による栄養素嗜好性の制御メカニズム2017

    • 著者名/発表者名
      佐々木努、松居翔、北村忠弘
    • 学会等名
      第38回日本肥満学会 (2017)
    • 招待講演
  • [学会発表] SIRT1はFGF21-NRF2-oxytocinシグナルを介してショ糖嗜好性を制御する2017

    • 著者名/発表者名
      松居翔、佐々木努、河野大輔、橋本博美、小林雅樹、北村忠弘
    • 学会等名
      第38回日本肥満学会 (2017)
  • [学会発表] Brain SIRT1 regulates macronutrient-based diet selection behavior through FGF21, NRF2, and oxytocin.2017

    • 著者名/発表者名
      Sasaki T, Matsui S, Kohno D, Kitamura T
    • 学会等名
      Consortium of Biological Sciences (2017)
    • 招待講演

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公開日: 2018-12-17  

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