研究課題/領域番号 |
17H01975
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
久保田 善彦 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (90432103)
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研究分担者 |
葛岡 英明 筑波大学, システム情報系, 教授 (10241796)
鈴木 栄幸 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (20323199)
舟生 日出男 創価大学, 教育学部, 教授 (20344830)
望月 俊男 専修大学, ネットワーク情報学部, 准教授 (50379468)
加藤 浩 放送大学, 教養学部, 教授 (80332146)
中野 博幸 上越教育大学, 学校教育実践研究センター, 教授 (90547051)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 科学教育 |
研究実績の概要 |
多くの児童・生徒にとって,STEM教育における抽象的概念の理解は困難である。実感の伴う直感的理解が不足していることが一因である。本研究は,STEM教育における抽象的概念を直感的に理解するための方略として,身体化認知の理論に着目した。2018年度は,特に理科の天文領域の学習を中心に,身体化認知を伴う学習システムの開発と評価を進めた。 第一に,日周運動の理解を支援するための教材と運用方法を開発した。昨年度の実践を参考に,太陽の動きをトレースすることで身体化認知を可能とするタブレット用アプリを開発した。更に,天球の理解を促進させるために,システム内の天球が縮小し透明半球となる機能を実装した。天球の理解は促進したが,日周運動の理解は不十分であった。そこで,開発システムにゲーミフィケーションの機能を追加した。太陽を正確に捉えボタンを押すことで得点が付与される。また,天球上に太陽の軌跡が表示できる。更に,学習者の反対側には,太陽の動きと連動する影を表示させた。小学校3年生および中学校3年生の授業において試用したところ,その効果が認められた。更に運用上の原則を確認できた。 第二に,月の満ち欠けを理解するための既存のAR教材に,心理学における空間的視点取得の仮想的身体移動のアイディアを導入した。具体的には,AR教材内に学習者の分身を登場させ,その分身を観察すべき地球の位置まで移動することのできる機能を実装した。このアプリを適切に運用することで,仮想的身体移動を支援できると考えた。中学校3年生の授業において試用したところ,その効果と運用上の原則が明らかになりつつある。 第三に,2017年度の成果を日本科学教育の学会誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
システム開発がスムーズに進み,年度の前半に中学生を対象とした実験が可能になった。実験成果を分析し,次のシステム開発と複数回の実験を行うことができた。システムを改良できただけでなく,運用上の課題を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
第一に,日周運動の理解を支援するための教材と運用方法を開発した。そこでは,ゲーミフィケーションを取り入れたタブレット用アプリを開発した。小学校3年生および中学校3年生の授業において試用したところ,その効果と運用上の原則を確認できた。次年度は,身体化認知とゲーミフィケーションの関係を再整理し,デザイン原則を導出する。それらのデザイン原則をもとに,日周運動における地上視点と宇宙視点の統合を目指す学習システムを開発,運用する。 第二に,月の満ち欠けを理解するためのAR教材に,心理学における空間的視点取得の仮想的身体移動のアイディアを導入した。そこでは,AR教材に仮想的身体移動(学習者の分身)を登場させ,仮想空間を移動させた。中学校3年生の授業において試用したところ,その効果と運用上の原則が明らかになりつつある。次年度は,それらの成果を質的,量的に分析することで,天文学習における仮想的身体移動に関するデザイン原則を導出する。それらを手がかりに,別分野の応用を検討する。 第三に,2018年度の成果を学会誌等に発表する。
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