研究課題/領域番号 |
17H02003
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
森田 裕介 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (20314891)
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研究分担者 |
辻 宏子 明治学院大学, 心理学部, 教授 (20374754)
瀬戸崎 典夫 長崎大学, 教育学部, 准教授 (70586635)
北澤 武 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80453033)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | STEM教育 / 空間的思考力 / タンジブルユーザインタフェース / VR / AR |
研究実績の概要 |
2018年度は,空間的思考力育成のためのSTEM学習教材の開発ならびに評価を行った.まず,STEM学習教材開発では,昨年度に引き続き,タブレット端末用タンジブルアプリとHMD型VR教材の開発を行った.タブレット端末用タンジブルアプリは,Bluetoothの接続が不安定なため,教室での活用が難しいと判断し,開発を中断した.一方のHMD型VR教材については,数学の空間図形の断面を提示する教材と,理科の太陽系の天体の位置関係を探索的に操作できる教材の2タイプを開発した.そして,教員養成系大学において,実験的に有用性を検討した.断面を提示する実験群には,HMD提示条件とPC提示条件,統制群には,紙提示条件を設定し,効果を比較した.空間的思考力の上位群と下位群で比較を行った結果,上位群はHMD提示条件をわかりやすいと評価し,下位群はPC提示条件をわかりやすいと評価したことが明らかになった. 次に,HMD型VR教材の効果的な授業導入を検討するため,探索型VR教材を開発し,STEM学習における順序性の検討を行った.探索型VR教材は,自身が能動的に仮想空間を移動しながら学ぶ教材である.大学生の被験者16名を探索先行群と定点先行群に分け,効果を検証した結果,能動的視点移動と定点観察の間には有意な差はみられなかった.学習者が仮想空間を探索する活動の有意味性についてはさらに検討を進めていく. 続いて,直接体験の時期が教育学部生のICT活用指導力にどのように影響を与えるのか実験調査を行った.実験では,教員養成課程の大学生37名(有効回答35名)を対象に,これまでにSTEM学習教材として開発してきた多視点型AR教材とタンジブル教材を比較させた.多視点型AR教材はタブレット端末をデバイスとして用いる教材で,タンジブル教材はテーブルトップ型インタフェースを操作する教材である.実験の結果,直接体験を実施することによって,ICT活用指導力が向上したことが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、空間的思考力育成のためのSTEM学習教材の開発ならびに評価を行った.科学教育と情報教育を総合的に学ぶSTEM教育は、これまで研究代表者が継続的に研究してきた天体学習の成果を基盤として発展させることができるため、概ね計画通りに進んでいる。しかしながら,今年度,十分に進んでいないところもある. まず、空間的思考力育成のためのSTEM 学習プログラムの考案については、継続的な議論を必要としている。学習指導要領が改訂され、プログラミングが導入された小学校には導入しやすくなっている.中学校を含めて,教科横断型のSTEM教育を早急に検討したい.一方,高等学校では,「総合的な探究の時間」や「理数科」との関わりも含めて検討を始めている.情報科,技術科,理数科を教科横断として実践するには,カリキュラムマネジメントを含めて学校との協働プロジェクトを立ち上げる必要がある. 次に、STEM 学習教材開発についてである.タブレット型タンジブル教材の開発は、通信機能に問題があり,開発を断念した。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)型VR教材については、ゼスチャによる指示機能とは別に,実世界指向インタフェースの考え方を取り入れ,実物体を操作する教材を開発した.内容は,数学の空間図形と理科の天体に関するものであった.教員養成系の大学を対象に,作成した数学の空間図形を学ぶための探索型VR教材の評価を行った結果,理数情報系の大学生から高い評価を得た.一方,文系の学生らは導入に難色を示した.この背景には,空間的思考力のレディネスの差があると考えられるが,詳細は分析中である. 一方で,3Dテトリスの開発や,テーブルトップ型顕微鏡の開発,レゴマインドストームを用いたプログラミングの導入など,直接関連していないトライアルも多数行っている.今後は,様々な実践のデータを踏まえて最終年度の成果報告につなげていきたい.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、空間的思考力育成のためのSTEM学習教材の開発ならびに評価を行った.2019年度は最終年度であることから,成果をまとめて発表することを中心に進めていく. 空間的思考力育成のためのSTEM 学習プログラムの考案においては、新しい学習指導要領を鑑み、小学校、中学校、高等学校などの協力校の教諭と連携して、具体的な実践カリキュラムの提案を行う.米国におけるSTEM教育の導入プロセスや効果を鑑みつつ,日本のカリキュラムに適したプログラムの提案を行う.小学校においては,図工のArtとプログラミングと合わせたSTEAM教育として提案する.中学校は理数系の探究型STEMと技術家庭科の問題解決型STEMとに分けた実践をデザインする.高等学校においては,探究型STEMと問題解決型STEMを往復するルート(平方根)カリキュラムの提案を行う. 次に、STEM 学習教材の開発については、VR型タンジブル教材を完成させ,統合した仮想学習環境として構築する。HMDを使った統合的な仮想学習空間の構築によって,空間的思考力を多角的に向上させる教材となる.空間的思考力の評価方法については,マサチューセッツ工科大学で現在進められているステルスアセスメントを参考に,機能実装を検討する.実践評価については、大学生を対象としたパイロット研究を踏まえた上で、小学校、中学校、高等学校での実践研究を依頼する。
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