研究課題/領域番号 |
17H02008
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
鈴木 寿志 大谷大学, 文学部, 教授 (60302288)
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研究分担者 |
伊藤 孝 茨城大学, 教育学部, 助教授 (10272098)
乾 睦子 (林睦子) 国士舘大学, 理工学部, 教授 (10338296)
先山 徹 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 准教授 (20244692)
大友 幸子 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (40143721)
清水 洋平 大谷大学, 文学部, 非常勤講師 (50387974)
西山 昭仁 東京大学, 地震研究所, 助教 (50528924)
廣川 智貴 大谷大学, 文学部, 准教授 (60410974)
田口 公則 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 主任学芸員 (70300960)
高橋 直樹 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (90250133)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 変動帯 / 文化 / 石材 / フィリピン / タイ / 仏教 / 地質文学 / 文化地質研究会 |
研究実績の概要 |
変動帯における地質と文化の関係を明らかにするために、研究代表者に加え、研究分担者9名、連携研究者1名、研究協力者6名の体制で以下の個別研究を推進した。 (1)茨城県の稲田石・真壁石の産地成立について、文献資料とヒアリングから整理した。(2)山形城艮櫓と肴町向櫓の石垣調査を実施した。(3)千葉県の凝灰岩石材の利用について調査し、地域限定的な利用を明らかにした。(4)歴史地震研究における現状と今後の展望についてまとめた。(5)フィリピン・セブ島、ボホール島において、自然科学や災害と関係した昔話・伝説・習慣等について聴き取り調査を実施した。(6)タイの仏教寺院における結界石の形や浮彫りの現地調査を実施した。(7)六甲山地の採石場跡の岩石と日本海側に分布する中世~近世の石造物について調査し、石材流通について考察した。(8)淡路島の基盤岩とタマネギ農地の関連を調査した。(9)香川県五色台地域の山岳霊場の地形・地質学的環境を、小豆島の山岳霊場と比較した。(10)宮沢賢治の作品世界について、地質学的観点からの評釈・鑑賞を試みた。(11)山陰海岸ジオパークにおいて丹後国風土記伝承をジオツーリズムに取り入れる試みを実践した。(12)兵庫県但馬地方において寺社に存在する近世石造物を調査し石材の産地の同定を試みた。(13)東北地方の磨崖仏と地質の関係について、データベースを作り始めた。(14)小松市の凝灰岩について調査し、歴史的利用をまとめた。(15)かつて文学において否定的な位置を占めていた「山」が、スイス派の批評家たちによって肯定的に捉えられるに至ったことを指摘した。(16)身近な自然景観の教材として学校の校歌を収集した。 平成29年8月には地学団体研究会旭川大会において文化地質学のシンポジウムを開催し、平成30年3月には文化地質研究会を設立し、シンポジウム・研究発表会を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者・研究分担者・連携研究者・研究協力者の個別課題の研究実績は着実に成果をあげている。平成29年度は初年度にもかかわらず、総勢16名で雑誌論文10篇、学会発表36件、図書1冊(分担執筆)の成果をあげることができた。多くの学会発表は、次年度の論文執筆へと繋がることが期待される。平成29年8月27日には地学団体研究会旭川大会において、普及シンポジウム「私たちの生活と大地―文化地質学のススメ―」を開催し、6件のシンポジウム講演、3件のポスター発表がなされた。特に北海道特有の地質文化について紹介され、議論された。 平成30年3月10日には、文化地質研究会を立ち上げ、設立総会と記念シンポジウムが開催された。翌日の3月11日には、研究発表会が開催された。研究会を立ち上げたことで研究発表の場が広がり、研究成果の公表に弾みがついている。この第1回設立大会では、8件のシンポジウム講演、12件の研究講演、6件のポスター発表の計26件の講演・発表が行われた。これは従来の地質学会などの既存学術大会では開催不可能な件数である。シンポジウムでの総合討論では、仏教や文学と地質の関わりについて新たな視点が開けたこと、凝灰岩が地産地消的な地域文化に寄与していることが話し合われた。研究会立ち上げに伴い、専門の学術雑誌『地質と文化』の創刊を予定している。平成29年度は準備段階として、編集委員会の組織化、ISSN番号の申請、原稿募集を行った。 研究会の設立とウェブサイトの公開により、文化地質学の認知は確実に高まっている。文化地質研究会の会員数は50名を超え、毎月数名の入会希望が届く。研究者が増えることで、文化事象を交えた一般の人々への地質学普及が進むと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は個別の研究課題をさらに推進していくとともに、研究協力者に地質学以外の専門家を積極的に招くことを模索する。 平成30年9月には地質学会札幌大会が予定され、文化地質学のトピックセッションを開催する準備を進めている。招待講演を2件予定しており、アイヌ文化・北海道の地名と地質の関わりについて、講演いただく予定である。また年度末には文化地質研究会の第2回学術大会を開催する予定である。シンポジウムではできる限り多くの地質学以外の専門家を招待したい。具体的には、石庭の地質学(造園学者)、現代思想論(哲学者)、政治地勢論(政治学者)、メディア関係者(テレビディレクター、脚本家)などである。これら2回の学術大会にて、本科研費の個別研究課題の成果を積極的に発表していく。 また平成30年9月10~13日には、文化地質学発祥の地であるザルツブルクにて、カルパチア・バルカン地質学連合大会が開催される。研究代表者が世話人として「Culture Geology」のセッションを申込み、採択された。これを機会に、日本の文化地質学とオーストリーのKulturgeologieの交流が深まることが期待される。アジアについては、これまでタイとフィリピンについて事例研究をを進めてきたが、今年度は新たにミャンマーの研究者と連携し、アジア地域の研究を拡張する。 学術出版物として、平成29年度に開催された地学団体研究会シンポジウムの発表を元に、地球科学誌に「北海道の文化地質学」を特集する予定である。また文化地質研究会の学術雑誌『地質と文化』を創刊し、6月に創刊号を、12月に第2号を発行予定である。
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