研究課題/領域番号 |
17H02013
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
那須 浩郎 岡山理科大学, 生物地球学部, 准教授 (60390704)
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研究分担者 |
大田 竜也 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (30322100)
山田 昌久 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (70210482)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ドメスティケーション / 種子の大型化 / 栽培実験 / 古DNA / 縄文時代 |
研究実績の概要 |
①野生種の栽培実験 1年生草本のツルマメ(ダイズの野生種),ヤブツルアズキ(アズキの野生種),イヌビエ(ヒエの野生種),落葉広葉樹のクリ,オニグルミ,常緑広葉樹のイチイガシを対象に栽培実験を開始した.栽培実験は,岩手県一戸町御所野遺跡公園,山形県天童市西沼田遺跡公園,石川県能登町真脇遺跡公園,岡山県岡山市岡山理科大学,福岡県福岡市板付遺跡公園,大分県大分市柞原八幡宮の全国6箇所にて,現地協力者と共同で開始した.初年度の主な成果として,有肥区と無肥区において栽培したツルマメとヤブツルアズキの種子100粒重を比較した結果,有肥区の方がわずかに重くなることが明らかになった.この結果は,縄文時代の住居周辺の冨栄養環境下では,マメ類のサイズが野生状態よりも大きくなる可能性を示している.次年度はこれを継続し,さらに大きくなるかどうか検証する.また,摘果の影響が種子サイズに与える影響についての実験も開始する.
②古DNA分析 縄文時代のアズキ炭化種子からDNAを抽出するための基礎実験として,現生ヤブツルアズキの炭化実験を開始した.炭化の度合いによるDNAの残存量を調べることを目的に,まず,現生ヤブツルアズキの種子を200度,230度,250度の温度でそれぞれ1~6時間燃焼し,重量と種子表面の変形や破損の度合いを調べた.その結果,250度で4時間以上燃焼すると種子表面にひびが入って破損し,種子重量が35%減少することが明らかになった.現在,この種子を用いてDNAの残存量の測定を進めている.また,炭化実験と平行して,より炭化度合いの少ない遺跡出土のアズキ種子資料を各地の埋蔵文化財センターを通して探索した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
代表者の所属先の移動に伴い,研究の開始がやや遅れた.しかし,栽培実験については,ほぼ予定どおり,各地で栽培実験を開始することができ,データも得ることができている.アズキ炭化種子の古DNA分析については,貴重な文化財である縄文時代の炭化種子から確実にデータを得るために,まずは炭化種子のDNA残存量を調べる基礎実験から開始することにした.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は栽培実験を全国各地で継続する.新たに,山梨県北杜市梅之木遺跡公園,静岡県埋蔵文化財センターの2箇所を実験地に加える.肥料の有無に加えて,摘果や間引きの効果が種子サイズに与える影響について実験する.古DNA実験については,炭化種子のDNA残存量に関する基礎実験を完了させ,どの程度の炭化度合いであれば,DNAの抽出が可能かどうかの指標を作成する.同時に古DNA分析のための炭化種子資料を探索し,実験の開始を目指す.
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