研究課題
全国の遺跡公園においてツルマメとヤブツルアズキの栽培実験を継続した。その結果、施肥区と支柱区において,野生マメの種子サイズが有意に大きくなることを確認し、環境条件により野生マメの種子サイズが変化することを示した。しかし、毎年種子サイズが徐々に増加する傾向はみられなかった。本年度は火入れによる効果も検討したが、火入れにより種子サイズが増加することはなかった。3年間の全国各地での栽培実験により得られたツルマメとヤブツルアズキの種子サイズを,縄文時代の遺跡から出土するダイズ属とアズキ亜属種子のサイズと比較した。その結果、アズキ亜属では縄文時代中期後半の土器の圧痕資料で野生種の最大サイズを上回る例があり、縄文後期後半には炭化種子でも上回ることが明らかになった。ダイズ属では、土器の圧痕資料で縄文中期中頃から野生種の最大サイズを上回る例があり、縄文中期後半には炭化種子でも野生種のサイズを上回る例が見られた。特に圧痕資料では野生種の倍以上のサイズのものがあり、急激に大型化していることが明らかになった。これらの結果により、野生マメ類は、環境条件により大型化するが、土壌養分や光条件のみでは縄文時代に見つかるような急激な種子大型化は起きないことを実験により示すことができた。縄文時代の大型種子は何らかの遺伝的な変異により大きくなっている可能性が高い。現生ヤブツルアズキの炭化DNA実験では、220℃を超えて炭化させた場合DNAがほとんど抽出できなくなるが,180~200℃程度の低温で炭化した場合にはDNAが残存されることを突き止めた。200℃で5時間炭化させた場合の種子形態を観察すると,子葉内部や初生葉は炭化するが,著しい変形やひび割れは見られずヘソの圧膜部分は焦げる程度であることが分かった。貴重な文化財である炭化種子の古DNA実験を進める際の種子選定基準を確立することができた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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ビオストーリー
巻: 32 ページ: 14-19
巻: 32 ページ: 8-13