研究課題/領域番号 |
17H02014
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
長柄 毅一 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (60443420)
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研究分担者 |
三船 温尚 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (20181969)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 古代青銅器 / 鋳物 / 鋳造方案 / 凝固解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、古代の鋳造品の製作技法を、鋳造シミュレーションにより明らかにすることである。その手法を簡単に述べると、3Dスキャナで取得したポリゴンデータをもとに、凝固解析ソフトを用いて引けや、巣などの凝固欠陥の出方を解析し、鋳物から観察される欠陥等と対照するというものである。 本年度はまず日本の青銅器として銅鐸を選び解析を実施した。対象となった銅鐸は江戸時代に、現在の岐阜県可児市で出土した久々利銅鐸であり、高さは111.5cmと国内で出土した銅鐸のなかでも十指にはいる。3D計測はATOS TripleScanを用い、全形を計測転換距離176ミクロンとして計測した。取得データをベースに3D CADソフトにより湯口、湯道等を設定し、凝固解析を実施した。なお、解析には銅鐸の成分データが必要となるが、これは、遊離片からサンプルを取得し、ICPを用いて化学分析を行うことにより得た。凝固解析はJSCAST ver.15を用いて実施し、湯流れ、温度分布、引け予測等のデータを得た。 このほか、三角縁神獣鏡の解析や爵(中国殷代の酒器)の解析も実施した。三角縁神獣鏡は奈良県黒塚古墳出土三角縁四神四獣鏡をもとに製作された再現鋳造品からポリゴンデータを取得し、解析を行った。この成果については、2019年8月に中国西安で開催される国際学会において発表する予定にしている。また、爵は京都の泉屋博古館所蔵の冊爵から取得したポリゴンデータにより行った。成分データは不明であったが、何堂坤氏による著書「中国古代金属冶煉及び加工工程技術史」のデータを使用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、3種類の古代鋳物(銅鐸、銅鏡、酒器)についての成分調査と凝固解析を実施したところであり、概ね順調な進展をしていると考えている。ただし、3Dスキャンしたポリゴンデータの加工や凝固シミュレーションの時間が短縮できれば進捗を加速できることから、対応策を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
前年に引き続き、三角縁神獣鏡の凝固解析、殷周青銅器の解析を進める。ついで、江戸大仏の解析を行う予定である。江戸大仏は全体を一回の鋳造工程で製作されたわけではなく、パーツ事に複数の職人による分業体制で製作されたと考えられる。そこで、欠陥を見ながら、鋳造方案に特徴がないかを調査していく。 なお、凝固解析に必要な成分分析を実施する際、資料表面を研磨する場合がある。こうした前処理の影響を見るために、本年度導入した分光測色計により、研磨箇所の色の変化をモニタリングしていく予定である。
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