研究課題/領域番号 |
17H02020
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐野 雅規 早稲田大学, 人間科学学術院, 助教 (60584901)
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研究分担者 |
木村 勝彦 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (70292448)
對馬 あかね 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (70757682)
箱崎 真隆 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 特任助教 (30634414)
安江 恒 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (00324236)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 樹木年輪 / 酸素同位体比 / 年代測定 / 年輪年代学 |
研究実績の概要 |
今年度は、韓国や日本で収集した(今後収集する)古材の年代を決定するため、その基盤となる日本海側の年輪酸素同位体比データを集中的に整備した。具体的には、青森県のヒバ古材、新潟県のスギとケヤキの古材、富山県のスギ古材を対象として酸素同位体比の測定を進め、全ての地域の標準年輪曲線を連結させることで、紀元前7世紀から紀元16世紀にいたる2300年間の連続した年輪酸素同位体比のデータを整備することが出来た。さらに、このデータセットを利用することで、韓国のUlsanで採取した考古材の年輪年代を正確に決定することに成功した。 他方、上記の年輪データは16世紀以前に限られるため、近世や近現代の木材の年代決定には使用できない。この問題を克服するため、立山で採取した年輪サンプルの分析を行った。このサンプルは年輪数が500年を超えており、近世から現代までの期間をカバーしているほか、上記の北日本データとも重複期間がある。今年度は、立山産の複数個体を対象として、過去150年間の年輪セルロースの酸素同位体比を測定した。作成した暫定的な標準年輪曲線は、韓国南部のデータとも変動パターンが整合しており、立山のデータを過去に延長させることにより韓国産の古材の年代決定も可能なことが明らかとなった。 韓国との共同研究を加速化させるため、韓国の考古学者も招いて国際ワークショップを韓国で開催した。また、本研究課題の韓国側の研究協力者と共同で論文を執筆し、韓国の学術雑誌に成果を公表することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が2017年度に異動したため研究室の整備に相応の時間を要した。しかし、研究分担者と密に連携することにより、多数の年輪サンプルの酸素同位体比を測定することができ、当初の計画通り順調にデータを生産するに至った。また、本課題に関係する日本と韓国の研究者が韓国のウリ文化財研究院に集まり、国際ワークショップを開いて今後の共同研究について議論した。そのほか、韓国の研究協力者と連名で韓国の学術雑誌に成果を公表することができた。さらに、次の論文に向けて解析が進んでいることからも、順調に研究が進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度に引き続き、日本海側の各地域で収集済みの古材サンプルを材料として、その年輪酸素同位体比を測定して、各地の年輪データの時空間分布を拡充させる。また、立山で採取した年輪サンプルの酸素同位体比測定を進め、現在から西暦1400年頃まで遡る標準年輪曲線を構築する。さらに、日本や韓国の各地において、新しく古材サンプルを収集・計測し、各地で整備した年輪データベースと酸素同位体比の経年変動パターンを照合して、それら古材の年輪年代を決定する。以上の成果をまとめ、複数の論文として学術誌へ投稿することを目指す。
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