研究課題/領域番号 |
17H02022
|
研究機関 | 公益財団法人元興寺文化財研究所 |
研究代表者 |
雨森 久晃 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (70250347)
|
研究分担者 |
塚本 敏夫 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (30241269)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 文化財輸送技術 / 防振システム / 梱包材料 / 海外美術館・博物館 |
研究実績の概要 |
海外文化財輸送技術との比較による日本の文化財輸送技術の発展に関する研究として本研究では、3つの柱(目標)を設定し研究を進めてきた。1つは新たな素材による梱包材料の選択とその評価を行い、より良い梱包材を提案すること。2つ目は、地方博物館や資料館において進入路等スペースの制約や少量の移動、経済面等から正規の美術品専用車が使用できない場合、または、輸送業者が用いる小型商用バンを用いた輸送では、美術品専用車では必須の条件であるエアサスペンションを装備しない輸送車を使用することがあり、輸送時の棄損に対する安全が確実に担保されない。これらの安全を担保するためワンボックスタイプ商用車用の防振システムの開発を柱としている。3つ目の柱は梱包技術の国際的な平準化である。海外博物館美術館のキュレーター等と話をする場合、日本の和紙等の包材につて話題が上ることがあったが、海外における文化財の輸送について日本の文化財輸送技術の優位性、または外の文化財輸送技術の優位性等については個々の博物館あるいは担当者間での梱包・輸送技術の認識はあるが、それらが向上されそれぞれの国において伝播されることは多くないのが現状である。それらの情報・技術の相互理解及び日本における文化財輸送技術の発展を目標とし研究を行った。 梱包材料については、現時点で使用されている軟質ウレタンフォームや薄葉紙、綿(綿花)と薄葉紙を用いた綿布団等を使用した場合の振動について検証した。 ワンボックスタイプ商用車用の防振システムの開発では、走行試験コースの設定を行い、綿布団による梱包を行い走行させることで車両の振動と梱包時の試供体の振動を計測することにより実際の車両の振動より梱包状態下の振動が減少していることを検証できた。 海外の博物館とのコンタクトは、研究協力者と検討を重ね、文化庁海外展開催館での調査を行うことを目標に話し合いを進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新たな素材による梱包材料を選択しその評価を行い、より良い梱包材を創出する研究においては、既存の梱包材料についてのデータは検討したが、新たな素材のリサーチ及び選択が捗らず、新たな梱包素材による振動軽減データを得られず、研究の遅れが生じた。 海外文化財輸送技術についての調査で研究協力者との調査先の選定に於いて調査項目の検討に時間を要したため、調査を行う博物館等の選定に遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度については以下の通り研究を進めていく。 ワンボックスタイプ商用車用防振システムの開発については、前年度に行った走行実験では、データ数として不足していたため、今年度において車両の車種を検討・増加し、実走行実験を行う。このデータを基に研究協力者(株式会社守谷商会・株式会社エーエス)に参加してもらい、防振システムの基本形状などの基礎的開発及びダンパーの形状や種類を選択し、またそれらの基本設計を行ってから、実際にプロトタイプを試作するまでを行うこととする。 梱包素材の評価については、前年度現在文化財輸送に使用されている梱包材について若干の評価試験を行ったが、今年度は新たな素材による梱包材料のリサーチと選択を行い、実走行実験においてデータを収集し、そのデータを基にして評価・検討を行い 今年度において文化庁の海外展覧会開催館等をターゲットに調査を行う方向で進めている。また、研究協力者に参加してもらい現地調査において梱包技術及び輸送業者の選択、梱包材料の種類・材質・効果などの調査項目の検討を行う。また、遺物や作品・資料等の海外輸送時にデータロガを設置することで輸送時の衝撃なども併せてデータ化し、衝撃が生じた要因を解析し、その衝撃に関する減振等を可能とする梱包材料の選択、取り扱い時のマニュアル化を目指し、研究を進める。
|