最終年度では、海外渡航の緩和が進んだため、海外の美術品輸送に関する調査を実行することが可能となったため2019年に行ったオランダ国での調査を継続して行った。 本年度の海外調査は、2か所の施設を中心に行った。Sebert Trillingshechniekは、現在依頼された多種多様な輸送に関する損傷や輸送時の振動・衝撃等を実験し、そのデータをクライアントに示し、輸送に対するリスクマネージメント提案する企業である。美術品輸送の分野では、2011年から温湿度・気圧のデータ化から始まり、振動実験では外側木製クレート(木製箱)を作製し、内部にキャンバスを設置した内側木製クレートをコイルスプリングで上下を支える試験体を作製し実験を行っていた。内側クレート内にはもう一つ木箱を設置しそこにキャンバス中央にセンサーを仕掛けたものを実験体として加振し実験を行いデータの取得をしていた。実験ラボでは一定の周波数で加振できる装置など数種類の装置での実験を行い、輸送リスクの洗い出しを行っていた。 HIZKIAは、美術品輸送会社であり、美術品の保管庫業も行う、オランダでは老舗の輸送会社である。前回2019年に訪問したヴァン・ゴッホ美術館でも使用されている絵画輸送用クレート「グリーンタートル」を所有し、国内・国外輸送に使用している会社である。その活用方法や重量による固定振動数の設定及びワイヤスプリングの線径等を細かく設定し輸送を行っており、情報を得ることができた。また、これまで「グリーンタートル」その前身の「イエロータートル」は絵画等二次元の作品を輸送するものであったが、近年立体物を輸送するための「Turtle Climate Cabinet」も実用化されていた。 博物館等の施設では資料等を移動する際台車を用いることが多い。当該年度では耐荷重の軽い免振キャスターを用いた台車の性能試験を行い、結果を得た。
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