研究課題
研究期間の最終年度である本年度は総括的な研究を行った。繊維製品を伴う出土資料の観察等により現況を把握した。観察は肉眼および実体顕微鏡のほか高精細な三次元形状計測を用いた。顕微鏡画像等では十分に記録できない織物が何重にも重なる情報は三次元情報によって客観的に情報を提供することができ、本研究による三次元計測法は織物の観察作業を補完する役割を果たすことが可能である。表面観察だけでは理解が困難な資料内部の構造調査の一環として、SPring-8を利用しX線CT撮影を実施した。X線CTを用いた透過像の観察によって、表面からは「隠れた」織物の実態を把握することができ、織物材料の形態的特徴を非破壊的に検討することが可能となった。また、光音響赤外分光分析により遺物から脱落した小片を用いて織物材料の非破壊分析を検討した。古墳出土試料の分析によって織物材料の同定が可能であること、織物が埋蔵環境中で受ける腐食過程に関する知見を得られることが確認できた。考古学的には古墳の所在地域や規格・出土織物の属性評価をおこない,古墳時代全体を俯瞰した視点で研究を行った。統計学的な手法を用いて築造時期や地域・繊維製品の内容の変遷を検討した。一例として、600基の古墳があると言われる新沢千塚古墳群から出土した染織文化財を観察し、その所見を基に統計分析をおこなった。統計分析の結果、織密度から3分類できること、織物の種類や古墳の墳形との相関は見られないことがわかり、織物のつくり(織目の細かさ)は古墳の規模によらず様々であることが確認できた。総合的な調査として、福岡県船原古墳1号土坑から出土した馬具、武器、武具に残存する有機物について肉眼および実体顕微鏡、X線CTデータ、出土位置の三次元データを利用し、種類や用途の分類を行った。これらの研究成果の一部は冊子体の報告書を作製し、今後の染織文化財研究の資料とした。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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