研究課題/領域番号 |
17H02031
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
早川 裕弌 東京大学, 空間情報科学研究センター, 准教授 (70549443)
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研究分担者 |
齋藤 仁 関東学院大学, 経済学部, 准教授 (00709628)
小花和 宏之 東京大学, 空間情報科学研究センター, 客員研究員 (10422205)
内山 庄一郎 国立研究開発法人防災科学技術研究所, その他部局等, 特別技術員 (30507562)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高精細地形地物情報 / 点群データ / 3次元 / レーザ測量 / 写真測量 / 地理情報システム / 無人航空機 |
研究実績の概要 |
本年度は,1)文献調査によるHD-PCD(高密度点群情報)に関する研究動向の把握を行い,これまでにあまり対象とされていない地形現象も含め,現地で必要とされるデータ取得および解析手法の系統的な整理と,最適な手法選択肢を検討した。2)並行して,地表面で生じる自然現象を対象とした既存および新たなHD-PCD取得解析の手法体系を整理した。このために,既存の機材に加え,最新のHD-PCD取得機材を試験的に利用し,SLAM技術を併せたUAVやハンドヘルドによる安価なモバイルレーザ測量(MLS),全天球カメラによる全方位SfM(Pano-SfM)などの有効な適用方法を検討した。3)既存・新規双方の機材を用いたHD-PCD解析の実際の適用を,現地調査に基づき実施した。具体的には,流域地形環境の変動が大きい地点である大谷崩(静岡県),阿蘇仙酔峡(熊本県),九十九里海岸(千葉県)などで調査を実施した。他にも,火山,湖沼,森林など,新たな調査可能地域を検討・開拓した。とくに地形特徴の抽出に注力し,時空間変化抽出の基礎データとした。4)データ共有のためのシステム整備と既存コンテンツの整理を行った。共同研究利用システムJoRASを援用し,蓄積された点群およびその派生データを整理し投入し,データ共有・解析のためのシステム改修計画の検討を進めた。これにより,取得データや開発したツールの利用が外部者でも可能となり,流域地形環境に限定されない,HD-PCDの多様な使用用途を発掘できるようになることが期待される。5)また,高精細地形情報に関するシンポジウム・ワークショップおよび国際会議(JpGU, EGU, AOGS)におけるテーマ別セッションを主催・共催した。これにより,HD-PCD取得の最新技術など情報収集や,HD-PCD解析にかかる問題点,学術的・産業的適用事例の報告など,研究者間での情報共有を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種対象地における多様な手法による現地計測の実施,データ解析,ウェブサイトおよびデータ共有システムの構築・運営など,基幹的な部分に関しては計画通りに進行した。とくに,共同研究支援システムを利用して,関連する研究者間で取得データの共有・利用を可能とし,そのコンテンツを増強した。また,これらのデータ・ツール群への入口として,また各種情報発信の起点として,独自のウェブサイトの管理運営を行った。ウェブサイトは大幅な刷新を行い,視認性やアクセシビリティなどの向上に努めた。 2017年4月には,EGU(欧州地球科学連合)2017年大会において,セッションの共同コンビーナとして参加し,多数の研究者と議論を交わした。加えて5月には,JpGUにおいて国際セッションをコンビーナとして主催し,高精細地形地物情報に関する研究の議論の場を設けた。 10月には東京大学柏キャンパス一般公開において機器展示と体験会を行い,本手法の一般普及につとめた。2018年1月には国連のサポートによるGNSSワークショップに講師として参加した。2018年2月には「第5回高解像度地形情報シンポジウム」を開催し,ワークショップも実施しつつ,様々な関連分野の研究者・技術者の間で,データの取得から活用までの総合的な議論が交わされ,今後の進展についても指針が得られた。この他にも,関連するテーマにおける小規模な研究会やワークショップを複数回にわたって実施した。さらに,Progress in Earth and Planetary Science (PEPS / Springer),Natural Hazard and Earth System Science (NHESS / Copernics) の2つの国際学術誌において,高精細地形情報に関する特集号を編集者として企画・実施し,多方面からの学術論文を募集し編成した。
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今後の研究の推進方策 |
各種対象地における現地計測の継続とともに,蓄積されるデータの処理とアーカイヴ化をさらに推進するとともに,その過程で得られた解析手法の最適な手順やノウハウの整理を行う。加えて,国内におけるワークショップや,国際会議におけるセッション企画を継続し,関連する研究者間との情報共有と,ニーズの吸い上げ,今後の展開に関する議論を行う。さらに,国際査読誌(PEPS/NHESS)における特集号の出版から,さらに次の特集号もしくは専門書の編成を検討し,関連する研究を総合・統括的に推進する。
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