研究課題/領域番号 |
17H02038
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
李 皓 静岡大学, 情報学部, 准教授 (20411332)
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研究分担者 |
笹原 恵 静岡大学, 情報学部, 教授 (40237813)
市川 学 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (60553873)
遊橋 裕泰 静岡大学, 情報学部, 准教授 (90627374)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会調査 / 人口推定 / エージェントベースモデル / SA法 / 地方都市 / ゲーミングシミュレーション |
研究実績の概要 |
我々は人口構造に対する多元的な評価指標、及び評価フレームワークを構築した上で、社会のエージェントベースモデルを設計した。実際にエージェントのパラメータ推定のために、地方都市である浜松市に対する社会調査を行った準備をしたが、該当年度で公表された国勢調査の詳報を精査した結果、サンプリング手法の変更が必要になることが判明したため、繰越申請をした上で、浜松市に対する社会調査は翌年に実施した。 エージェントベースモデルの構築に関しては、研究協力者と共に、公表されている国勢調査のデータを利用し、実績データに合致する浜松市80万人レベルの仮想個票の生成を行った。生成された個票データは、世代人数や区分などの世帯情報、性別や年齢・職業などの住民情報、そして座標・建物・丁目レベルの居住地データが含まれている。そして80万人レベルの市民エージェントの人口動態を実装するための技術について調査し、SA法が妥当であることがわかった。 市民基本調査のほか、我々は浜松市の外国人コミュニティのNPOへのヒアリングと、子育てコミュニティNPOへのヒアリングを行い、地方都市の人口動態の実態を調査した。得られた知見も前述の社会調査のアンケート調査票に反映した。 また、我々が取得した社会調査データや構築したエージェントモデルに基づき、人口問題に関連する教育用のゲーミングツールをいくつか試作した。具体的には、人口増減を競い合うカード型ゲーミングツールと、子育て世帯への社会資源の配分方法に関するボードゲームを開発した。 そして、人口政策を検証する前段階で、婚姻や出産などを促進するための方策について検討し、夫婦間のコミュニケーションを促進するモバイルアプリの試作や、モバイルコミュニケーションサービスの実証実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定されている浜松市に対する社会調査の実施が遅れたことが進捗状況がやや遅れているとした理由である。該当年度で公表された国勢調査の詳報を精査した結果、本来予定されているサンプリング手法では年齢・職業などに偏りが生じる可能性があったため、サンプリング手法の変更が必要となり遅れが出た。 地方都市の市民を対象とした社会調査以外については、極めて順調に進められており、それぞれのサブテーマに関する学会発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
社会調査を一年遅らせたことで、本来翌年度で実施予定の静岡市への調査と同時に行う必要があり、郵送調査のための人員の確保を最優先に行う必要がある。一方で、同じ年度で複数回実施することで、一度に大量の印刷や発送、回収を行うため、スケールメリットを活かすことも可能である。そのため、社会調査に関しては低コスト、省力化の方法を模索して行きたい。 また、アンケート個票と国勢調査を活用したエージェントベースモデリングの開発に関しては、既存の統計的手法に加えて、近年高性能化が著しい機械学習の手法も取り入れて行きたい。そのために、生存分析を含めて、様々な手法の比較検討を行う必要がある。 次に、シミュレーションのハードウェアとソフトウェアに関して、80万人規模の地方都市のエージェントベースの人口推定を行うための処理を高速に行うための環境構築及びプログラムの開発を進め、次年度中にエージェントベースの人口推定を試行する。 人口推定に関する政策応用のあり方を明らかにする研究業績を蓄積するために、開発したモデルを活用した周辺領域への応用を進めていきたい。具体的には、人間がプレイヤーとして参加するゲーミングシミュレーション分野で、人口動態に関連するゲームツールを開発し、周辺領域への応用を進め、その成果を論文にまとめる。
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