研究課題/領域番号 |
17H02039
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
今井 昭夫 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (40160022)
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研究分担者 |
平山 勝敏 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (00273813)
新谷 浩一 東海大学, 海洋学部, 准教授 (60290798)
西村 悦子 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (60311784)
松本 秀暢 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (70294262)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ロジスティクス / コンテナ / 最適化 |
研究実績の概要 |
本研究課題での研究内容の中心は、海空輸送機関を包含したハイブリッド回送ネットワークモデルの構築である。次の4つの個別研究項目から構成され、(i)海上輸送と航空輸送で共用できる折畳みコンテナ(海空折コン)の試設計ならびにその市場価格の推定、(ii)貿易地域別コンテナ貨物輸送需要の確率分布の推定、(iii)前記(i)と(ii)で得られた海空折コンの価格と輸送需要分布を用いた、 単一輸送会社対応のハイブリッド回送ネットワークモデルの構築とその解法の開発、(iv)複数輸送会社を包含したマルチエージェント型分散回送モデルの構築とその解法の開発、である。 初年度の研究成果は、まず実施項目(ii)の貿易地域別コンテナ貨物輸送需要の確率分布の推定において、関連研究レビューと統計情報収集を行っており、先行研究で使用されているものを参考にしながら、いくつかのケースを検討している。また実施項目(iii)の一部分であるが、コンテナ港と空港間を結ぶ陸上輸送部分におけるコンテナトレーラーによる空コンテナ回送問題についてモデル化を行った。これをVRPPD(Vehicle Routing Problem with Pickup and Delivery)モデルで表現し、小規模問題での数値実験を行って、折畳みコンテナと標準コンテナを使った空コンテナの集配送を経済的側面から比較して、折畳みコンテナの優位性を明らかにすることができた。数値実験において、折畳みコンテナが標準コンテナに比べて、集配送コスト、トレーラーの使用台数、走行距離の削減にどの程度貢献できるのかを確認している。実験結果より、折畳みコンテナは、貿易不均衡が大きくなると有利となることがわかった。しかし、折畳みコンテナの優位性は、折り畳み/組み立てコストに依存することから、いかにこのコストを抑えることができるかが重要課題であることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度では実施項目(i)の海上輸送と航空輸送で共用できる折畳みコンテナ(海空折コン)のの試設計、ならびにその市場価格の推定も行う予定であった。しかし、それが関連情報収集とヒアリング調査は行っているが、具体化までは進んでいない。そこで2年目においてもプロトタイプの再設計を行う予定である。 実施項目(ii)の貿易地域別コンテナ貨物輸送需要の確率分布の推定は、関連研究レビューと統計情報収集を行っており、また本プロジェクトメンバーの先行研究で使用しているものも参考にしながら、いくつかのケースを検討している所である。2年目において、最終年度のネットワークモデルの数値実験で使用するものとして確定する予定である。 実施項目(iii)の単一輸送会社対応のハイブリッド回送ネットワークモデルの構築と解法の開発では、陸上輸送部分についてはモデル化が進んでおり、数値実験において通常のコンテナと折畳みコンテナで比較をしながら、どのような状況下において、折畳みコンテナ導入効果が見いだせるのかを明らかにしている。海上輸送と航空輸送部分においてはモデル化は検討中であり、またコンテナタイプの違いによる効果を見出すための、比較実験の項目については先行研究をもとに準備は整いつつある。 実施項目(iv)のマルチエージェント型分散回送ネットワークモデルへの拡張に向けては、モデル構築の考え方などにおいて情報収集は行っており、複数輸送会社を包含すること、コンテナ回送ネットワークモデルへの適用方法について具体的な検討は、2年目に実施する予定である。 したがって、特に実施項目(i)を初年度に完了する予定でいたが、継続項目となり、これが実験項目(iii)のモデル化とその後の数値実験実施に影響するため、遅れていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、項目(i)の海上輸送と航空輸送で共用できる折畳みコンテナ(海空折コン)のプロトタイプの再設計を試みる予定である。それが困難であると判断された場合は、机上計算で特殊コンテナの有用性の計算を行う予定である。その作業と同時進行で、折コン試設計を通して同コンテナの製造コストの推定も行う。さらに海上・航空貨物輸送市場での折コンの需要供給モデルを構築し、それにより折コンの市場価格を推定する。この市場価格が研究項目(iii)の入力データになる。これらの作業は、欧州の海上折コンメーカーや大学研究者との共同研究となる。これら企業等はコンテナの技術的ノウハウだけでなく、コンテナ市場に関しても知見がある。そのため、これら企業等と連携して研究を遂行する予定である。 研究項目(ii)のの貿易地域別コンテナ貨物輸送需要の確率分布の推定は、関連研究レビューと統計情報収集は実施済みであることから、これらの精緻な解析を行い、回送ネットワークモデルの数値実験で使用できるものとして確定する予定である。 また、研究項目(iii)の海上・航空貨物の需要予測は、最大でも1ヶ月程度先までしか正確に行えないため、ある程度の予測誤差を含む長期的スパンで回送計画を立案する必要がある。既存の研究では、折畳みコンテナ数個分を1個の通常コンテナとして回送する(バンドルと呼ぶ)メカニズムが欠落している。そこで、この折コンのバンドルメカニズムを内包した、回送ネットワークの確率的モデルを構築する。さらに最終年度に向けて、研究項目(iv)の統合型ハイブリットネットワークモデルとマルチエージェント型分散回送ネットワークモデルへの拡張に向けた情報収集と適用方法の検討を行うとともに、問題範囲の同定も行う。
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