研究課題/領域番号 |
17H02049
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
毛利 宏 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50585552)
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研究分担者 |
永井 正夫 一般財団法人日本自動車研究所, その他部局等, その他 (10111634)
内田 信行 一般財団法人日本自動車研究所, 安全研究部, 研究員 (40426250)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 交通事故分析 / 右折 / ヒヤリハット / ヒューマンエラー / CHANGE BLINDNESS |
研究実績の概要 |
「ドライバから見えているはずなのに,気付かない」というヒューマンエラーによる交差点事故の要因とメカニズムの解明を目指している. ヒューマンエラー発生に繋がるドライバの弱点と,この分野において最も基礎的部分である,「ドライバが歩行者をいつ認知しているか」を定量的に調べることを目的として,ヒヤリハットデータベースの解析により,事故場面の特徴抽出及びドライバの行動を観察した.さらに,ドライビングシミュレータ(以下DS)を用いて走行実験を行い,ドライバの注視行動より,エラー発生の要因を探った.また「歩行者を認知できたか否か」を直接計測する手法を新たに開発し,ドライバの歩行者認知タイミングを計測した. その結果,自車のヨー角が60度以下においてドライバのサッケード発生回数が減少し,視線が右折先の将来の車線上に停留することが判明した.そのため,横断歩道手前から横断開始する歩行者に視線が向かないことを明らかにした.また,その傾向は対向車の通過を待って右折操作を再開した後に強く現れ,歩行者の認知が出来ないことを明確にした. 実験を行うにあたって,CHANGE BLINDNESSという人間の特性を利用し,ドライバに気づかれないようにDSにて歩行者の出現タイミングを変更し,どの時点で歩行者認知が不可能になるかを統計に基づいて定量化した. 結果は自動車技術会秋季講演会にて発表し,現在第1報として自動車技術会論文集に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画時にはCHANGE BLINDNESSによるドライビングシミュレータ実験方法の確立に時間を要すると想定していたが,予想よりも早く実験条件,方法を確立できたために,計画を前倒しして,実車実験に移行できる状況になりつつある. また,DS実験では視線計測をARマーカを用いて補正しているが,この動作についても当初予定よりも早く実現することが出来た.視線計測からメカニズム解明の筋道もだいたい目処が立っており,他のパラメータの影響を検討できるフェーズに来ている. 上記のように,試行錯誤が必要な部分が思いの外スムーズに進んだことが計画以上の進展につながっている. 但し,これからが実車実験であり,JARI-ARVを用いた実験では条件の選定などに時間を要する可能性がある.さらに,対策方法の検討・有効性確認フェーズに入るには,まだ時間を要する.
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今後の研究の推進方策 |
DS実験は思いの外スムーズに進んだので,JARI-ARV(仮想現実車両)を用いた実車実験フェーズに移行する.実験条件の選定には時間を要する可能性がある.また日本自動車研究所(JARI)のテストコースの使用頻度が高く,実験コース借用のスケジュール調整,被験者の募集など事務手続きなどにも若干の課題がある. JARI-ARVでの実験は,DSで確認したことの追実験をまず実施し,その後に対策案の検討と有効性確認を行う.対策案としてはドライバの注意を促すシステムの構築が必要になり,現時点から構想に着手する.当面は表示による情報提供,ハプティック刺激,道路インフラの変更を考えている.
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