研究課題/領域番号 |
17H02050
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松岡 昌志 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (80242311)
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研究分担者 |
三浦 弘之 広島大学, 工学研究科, 准教授 (30418678)
越村 俊一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (50360847)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リモートセンシング / 合成開口レーダ / 熊本地震 / ガス管被害 / 橋梁沈下 |
研究実績の概要 |
イランのウルミア湖にかかる橋梁を対象に,ALOS, ALOS2, Sentinel-1, TerraSAR-X衛星画像を用いて,長期間にわたる橋梁の沈下変形をSBASにより明らかにした。橋桁の時系列変動について主成分分析を行い,橋梁建設からの経過時期,水深,気温等との関係を検討したところ,第1成分の建設からの経年がもっとも影響があること,第2,第3成分はそれぞれ水位,外気温と相関があることを示し,これらを説明変量とした沈下予測のモデルを構築した。前年度による検討から地震前後のSAR画像のコヒーレンスが低下する地域は液状化に起因した地盤地下とよく対応し,地盤の沈下量が大きいほど,そして,沈下の勾配が大きいほどコヒーレンスは低下し,さらに,不同沈下であればコヒーレンスの値が乱れる傾向があることがわかっている。そこで,2018年9月6日の北海道胆振東部地震の液状化等による地盤被害を観測したSAR画像においてもその傾向があるかを検証し,地震前後ペアにてコヒーレンスの値が低下した地域は液状化被害が報告されている地域や著者らの現地調査とも対応した。液状化に起因した地盤被害地域を視覚的・定量的に抽出するため,コヒーレンス画像を主体として,さらに,強震観測記録および微地形分類図に基づき推定した液状化危険度と地盤の傾斜度を補足的に重畳して求めた液状化ポテンシャル画像を作成し,液状化ポテンシャルが高い地域は液状化被害とよく対応し,旧地形における谷筋および旧河道の位置とも対応することを示した。ライフライン被害推定に関しては,熊本地震の被災地を2つの軌道から観測したSAR画像を用いて,InSAR解析から地盤変位を水平方向と鉛直方向に分解し,変位分布の勾配(地盤ひずみに近似)と熊本地震のガス本支管の被害率との関係を検討し,勾配が大きい地域ほど被害率が高くなることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北海道胆振東部地震など解析に必要な衛星データについて,JAXAのWGの枠組みを利用してデータを無償で入手できたこと,また,熊本地震でのガス管被害のデータについても入手できた。橋梁の沈下解析についてはScientific Reportsに掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
SBAS(Small Baseline Subset)はダムや橋梁,建物がある地域ではフォアショートニングやレイオーバーの影響を受け,対象物の変位が正しく求まらないことがある。一方,PSInSAR(Persistent Scatter Interferometric SAR)はそのような対象物には適用可能なものの,位相が2πを超えるような急激な変位には対応できない。そこで,PSInSARでも大きな変位を計測できるよう手法を拡張し,シミュレーションにより妥当性を検証する。ガス管被害の被害推定について,熊本地震を対象に本支管のみならず供給管,灯外内管と地盤変位勾配との関係を検討する。さらに,より簡易にガス管被害を評価することを目的に,1つの軌道からのSAR画像から得られる視線方向(LOS:Line-of-Sight)のみの地盤変位勾配とガス管被害の関係についても検討する。また,熊本地震のみではデータ数が少ないことから,被害推定手法の信頼性を向上する目的で,2011年東北地方太平洋沖地震および1995年兵庫県南部地震を観測したSAR画像とガス管被害データを収集し,同様の解析を行う。
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