研究課題
熱可塑性プラスチックの燃焼は複雑な物理現象が混在しており,特に溶融部が変形することが燃焼特性の変化に直接影響を与えるため,溶融・ガス化過程の高精度予測こそが火災被害の予測精度に直ちに関わる.本研究では溶融を伴う燃焼場の燃焼特性を正しく可視化・計測できるシステムを構築し,申請者らが開発した溶融流動数理モデルにガス化モデルを組み込み,高次元のプラスチック燃焼モデルを確立することを目指す.溶融しながら燃焼する状態における溶融界面の変動を時系列で計測可能な手法としてUVバックライトCT法の原理を応用した3次元溶融面形状の検出ならびに表面温度の同時計測手法を導入・構築した.これにより流動するポリマーの外形およびガス化領域の「その場(in-situ)」計測が可能となった.溶融からガス化に至る際のガス化速度データが既存論文では不足することが論文レビューで明らかとなったため,自前でそのデータ獲得を試みた.具体的にはポリマーの燃焼特性を液滴燃焼と同じd2則に従うという過去の研究事例を参考とし,球状ポリマーの燃焼実験システムを開発した.その際,試料内部の温度計測も同時に行うことでガス化速度の温度依存性を調べることができる.このシステム導入により,燃焼速度を高精度で実測することが可能となり,ガス化速度の予測が可能となった.数値計算では,地道な作業の繰り返しによりアレニウス型の温度依存性を持つガス化モデルの組み込みに成功し,溶融流動とガス化を同時に実現する時系列数値解析が可能となった.非線形的なガス化現象に伴う数値的不安定を抑えるため,安定解に至らしめるための数値的な工夫を多数盛り込んでいる.溶融による流動により加熱対象部の相当体積が減じるに伴い試料温度上昇が顕著となり,ガス化現象のスパイクが現れるなど,溶融を伴う燃焼過程に関する重要な時系列変化の特性を数値的に再現することに成功した.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Fire Technology
巻: 56 ページ: 229-245
10.1007/s10694-019-00877-x