これまでレーザ弾性波源走査法と呼んでいる新しい損傷画像化手法について,理論的および実験的検討を行ってきた.その中で,本手法では,利用する波長に比べ非常に小さい損傷も検出できる特性を有することが示された.この特長を利用して,プラント内の配管のような大型構造物の減肉検査への適用と,金属材料内の微細欠陥検出への適用を試みてきた.本年は,大型構造物検査に利用する受信デバイスの開発と微細欠陥検出のための実験システムの構築を行った. 大型構造物検査に利用する受信デバイスの開発では,MEMSマイクロフォンと増幅器,Bluetooth送信器を備えた受信デバイスに電力供給を行うための太陽光パネルとその周辺回路を設計・製作した.これにより遠隔から投光器による光照射によって電力を供給することが可能となり,遠隔に置いた受信デバイスをいつでも起動し集音作業ができるものとした.レーザ弾性波源走査法への適用実験を行ったところ,これまでと同程度の画像化性能を有していることが示された.現在,手のひらサイズまで小型になってきており,今後500円玉程度にまで小さくなると期待している. 微細欠陥検出では,既存のファイバレーザ装置のパルス出力を外部信号に追随するようなシステムに改修し,2MHzまで出力を制御できるレーザ発振システムを構築した.これにより,アルミ鋳造品の表面直下に現れるミクロンオーダーの剥離を検出できることが試算されており,今後,試験体の製作を進めて検証していく.
|