研究課題/領域番号 |
17H02057
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
磯部 大吾郎 筑波大学, システム情報系, 教授 (00262121)
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研究分担者 |
田中 聖三 筑波大学, システム情報系, 助教 (10439557)
浅井 光輝 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90411230)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 津波伝播解析 / 構造解析 / 津波避難ビル / ASI-Gauss法 / VOF法 |
研究実績の概要 |
本年度は,津波避難ビルの設計時における損傷評価のための有限要素解析手法を構築することを目的として,まず,津波波力を表す方法として,構造物の形状を詳細に表現し,これらに作用する波力を高精度に評価することが可能な解析手法の構築を行った.時々刻々の自由表面流れを解析するために,安定化有限要素法に基づくVolume of Fluid (VOF) 法を実装した.数値解析例として,津波避難ビルに対する津波伝播解析を取り上げ,津波避難ビルの形状による波力の変化について検討を行った.得られた数値解析結果より抗力係数を算定し,それを用いた簡便な推定式での波力の評価を行った.推定波力と数値解析による波力を比較し,その適用性について検討を行った.また,構造物の損傷評価を行うための方法として,ASI-Gauss法に基づく骨組構造解析手法に対して先の津波波力を入力とする一方向連成解析手法を構築し,津波避難ビルの損傷評価を行い,流体解析による津波波力を入力条件とする有効性について検討を行った.その結果,算出された抗力係数を用いて算定された推定波力は,重複的な波力を良好に表現することができているものの,衝撃的な波力を評価することはできないことが分かった.また,これらの波力を用いて構造解析を行った結果,衝撃的な荷重が構造物の被害に大きく影響しており,避難ビルの損傷評価には流体解析の結果を使用することで衝撃的な波力を考慮する解析手法が必要であることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,当初の目標である1 方向連成解析手法の構築が完了し,それを用いた津波避難ビルの損傷評価を行い,流体解析による津波波力を入力条件とする有効性について検討することができた.また,粒子法による津波と浮体・漂流物の連成解析手法の開発、高精度化も行った.さらに,成果をまとめた査読論文を2編,書籍(共著)を1冊発行(予定)することができた.よって概ね順調に研究は進行しているものと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,漂流物が津波避難ビルに衝突し窓などの開口部が塞がれ,構造物に作用する波圧が増加してしまうような現象を精査することを目的とし,複数の漂流物模型を用いた水路実験を行う.これと並行し,前年度に高精度化,効率化を図った解析手法を統合し,津波避難ビルの安全性照査システムを構築する.解析を実施し実験結果と比較・検証することで,システムの高精度化を図る.さらには,津波災害の再現解析を行い,建物の損壊・転倒などを引き起こす要因について検討し,避難ビルの設計方針に関する知見を取得する.一方,この知見を得るためには,膨大な形状・形式に対するケース解析を行う必要がある.また,ASI-Gauss法は非常に高速な解析手法であり,建物一棟程度であればPCでも十分に解析が可能であるが,避難ビルが周辺に与える影響や周辺から受ける影響を評価するためには,複数の構造物についてまとめて解析する必要がある.そのため,並列計算機を購入し,OpenMPによるノード内並列計算手法を導入することで,大規模計算の高速化を図る.
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