津波電離圏ホールのメカニズムを探るために、シミュレーションコードを利用し初期津波高と電離圏ホールの規模について調査した。その結果、初期津波高が大きい場合、TECの減少率は小さくなる関係がみられ、定性的には観測と一致した。現時点の計算では、背景TECの値などのパラメータ調整ができていないため、これらのパラメータを調整すれば、定量的な観点でも観測と一致する結果が得られると期待される。また、津波電離圏ホールの検知において、観測点数が少ない場合においても電離圏ホールの形状が再現できるか、スプライン補完によって行えるか、昨年度から調査している。その結果、日本のGEONETの1200点分のデータを用いずとも200点程度の間引いた観測地点で、ノイズ(地震動などで受信アンテナのずれなどのために他と異なる挙動を示す)を除去すれば、スプラインの補完で再現できることがわかった。これらの成果は、津波電離圏ホールが成長している段階においても、最終形状が統計的に予測ができたり、GPS受信点がGEONETのように稠密でない他国においても津波電離圏ホールの形状を調査できるという汎用性がある。いずれの成果も現在、論文執筆中である。本研究の成果をもとに、実用的な早期津波予測の技術開発を今後は行う予定である。また、TEC観測のみならず地球磁場観測で得られた成果を総合的に解釈し、地震発生後の電離圏変動のダイナミクスを明確化する予定である。
|