令和元年度までに得られた結果をもとにして,以下の3項目に関して研究を実施した. 1.建物・橋梁被害把握:2016年熊本地震,2018年北海道胆振東部地震などによる建物や橋梁の被害を災害発生後の1時期の衛星SAR画像から抽出する検討を継続した.事前情報として光学センサ衛星画像,航空写真,GISデータなどを利用した.また,2019年房総半島台風(15号)による建物被害,およびを2019年東日本台風(19号)による橋梁被害を抽出した.これらをまとめて,災害後1時期の各種SAR画像を用いた建物・橋梁の被害抽出手法の精度と課題を示す. 2.水害・地盤災害の把握: 2018年北海道胆振東部地震による地盤災害の把握を継続した. 数値標高データ(DEM)とSAR後方散乱係数の変化およびコヒーレンスを照査し,事前画像の有無による影響を評価する. また,2019年東日本台風(19号)による浸水域の把握を行い,事前のDEMを導入することで,2時期SAR画像から抽出された浸水範囲の妥当性を現地調査データなどと比較して照査するともに,事前SAR画像が存在しない場合の抽出精度を検討した. 3.成果のまとめ:これまでの成果に基づき,緊急撮影の衛星SAR画像と事前のGISデータを併用した被害把握手法を整理しまとめた.建物,橋梁,堤防,自然斜面について,SAR画像の解像度,波長,偏波,撮影条件などに依存した被害抽出精度を明らかにし,災害発生時の衛星データの利用法に関し,国際論文誌や国内外の学会で発表した.
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