研究課題/領域番号 |
17H02068
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
能島 暢呂 岐阜大学, 工学部, 教授 (20222200)
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研究分担者 |
久世 益充 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 准教授 (30397319)
杉戸 真太 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 教授 (60115863)
小山 真紀 (田原真紀) 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 准教授 (70462942)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地震防災 / ライフライン / 被害予測 / 復旧予測 / 自助・共助 |
研究実績の概要 |
①テキストマイニングによるライフライン情報ニーズの把握: ライフライン情報の実態を把握するため,2016年熊本地震直後の新聞報道(地方紙:熊本日日新聞と全国紙:朝日新聞)を対象として,ライフライン関連記事のテキストマイニングを行った.分析対象期間は4月15日~30日の16日間とし,本震前日の4月15日をフェーズ1,以降3日間ずつ区分してフェーズ2~6とした.形態素解析に基づいて頻出語の出現順位付けを行ったところ,ライフライン関係の項目は地方紙の方が全国紙よりも上位に位置し,生活関連の情報ニーズの高さが明らかとなった.自己組織化マップによって語群間の関連性を可視化したうえで,供給系ライフラインに関する語群のコード出現率の推移と供給系ライフラインの停止率とを比較した.本震直後の停止率急増とともにコード出現率が最大となり,停止率の低下とともにコード出現率も低下傾向にあることが明らかとなった. ②機械学習によるライフライン機能被害・復旧予測モデルの構築: 都市ガスの地震時供給停止判断システムを対象とした検討を行った.低圧ガス導管の被害関数に基づいて,モンテカルロ・シミュレーションにより地表面SI値の観測パターンと導管被害率パターンの訓練データとテストデータを生成した.訓練データにサポートベクトル回帰(SVR)およびサポートベクトルマシン(SVM)を適用し,被害率の回帰分析と供給停止判断の分析を行った結果,1000回ないし2000回程度の学習で被害関数に匹敵する性能を示すことがわかった.また,分割表を用いて感度(TP rate)と偽陽性率(FP rate)および陽性的中率(PP value)と陰性的中率(NP value)によって供給停止判断の妥当性を評価したところ,機械学習により高精度な判別性能が得られることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,3年間の研究計画において,供給系ライフラインの地震時機能被害・復旧予測モデルの開発・運用を目指して,①テキストマイニングによるライフライン情報ニーズの把握,②機械学習によるライフライン機能被害・復旧予測モデルの構築,③ライフライン機能被害・復旧予測インベントリの構築,④ライフライン機能被害・復旧予測の逐次更新モデルの構築,⑤地震発生前後のライフライン情報提供のケーススタディ,の5項目を実施予定である.項目①はモデル要件の検討,項目②④は理論検討とモデル開発(予測モデル・逐次更新モデル),項目③⑤はモデル運用およびケーススタディの実施という枠組みである. 項目①については,ニーズ把握が十分できない場合に備えて,Webアンケート調査等の手段による収集データの補完を検討していたが,地方紙と全国紙の新聞記事が電子媒体で入手できたため,その必要はなかった.県レベルと全国レベルの分析としたため,空間的解像度の向上を図る余地はあるものの,所期の目的は達成された. 項目②については,実被害データが少なく十分な学習効果が得られない場合に備えて,モンテカルロ法の適用を検討していた.実際に平成29年度においては,モンテカルロ・シミュレーションにより疑似的な学習データおよびテストデータを生成することで,所期の目的は達成された.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に実施した「①テキストマイニングによるライフライン情報ニーズの把握」および「②機械学習によるライフライン機能被害・復旧予測モデルの構築」を引き続き実施するとともに,次の2項目について検討を進める. ③ライフライン機能被害・復旧予測インベントリの構築: 防災科学技術研究所のJ-SHIS(地震ハザードステーション)の公開データ等の地震動予測分布と,供給系ライフラインの施設データ,脆弱性分布,供給人口分布などのメッシュデータベースを重ね合わせる.ライフライン機能被害・復旧予測モデルを適用して,事前に多くのパターンの被害・復旧予測を行い,多様なライフライン地震災害の可能性を提示したインベントリを構築する. ④ライフライン機能被害・復旧予測の逐次更新モデルの構築: 実際の地震発生後,被災状況が徐々に明らかになる過程において,実被害情報の統合処理による推定結果の逐次更新を可能とするためのモデルの構築に着手する.推定更新のための方法としては,先行研究による成果を踏まえて,決定論的更新(事実への置き換え)と,ベイズ更新理論に基づく確率論的更新(逐次先行予測)を併用する.入手情報の候補としては,(1)拠点・基幹施設被害に関する情報,(2)供給停止エリアに関する情報,(3)ネットワーク被害・復旧状況に関する情報の3種類を想定する.
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