研究課題/領域番号 |
17H02069
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
牛尾 知雄 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (50332961)
|
研究分担者 |
楠 研一 気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 室長 (40354485)
平林 晃 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (50272688)
岩波 越 国立研究開発法人防災科学技術研究所, その他部局等, 総括主任研究員 (60221793)
高橋 暢宏 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (60425767)
吉川 栄一 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (70619395)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | レーダ / フェーズドアレイ / 気象 / 偏波 |
研究実績の概要 |
局地的な豪雨や竜巻など,地球温暖化や都市化の進行と共に,気象災害の防止に対する社会的な重要度は年々増している。本研究では,気象庁等での導入が期待されている次世代のC帯偏波フェーズドアレイ気象レーダの研究開発を行う。検討するレーダは,機械的な走査方法を一切用いない,マルチビームが可能な固定型のデジタルビームフォーミング技術を用いたフェーズドアレイレーダ方式である。そのため,アレイ形状や信号処理,ビームスケジュール等のシステムシミュレーションを実施,C帯偏波フェーズドアレイレーダの実現を想定して,竜巻や豪雨の予測改善・雨量精度向上の評価を行う。 固定型C帯二重偏波フェーズドアレイレーダに用いるアンテナ素子として,フェーズドアレイ方式で開発が容易であることから一般的に用いられているパッチアンテナを選択した。アレイ形状は平面型,円柱型,半球型を検討し,平面型ではチルト角10[deg]をつけたものを想定した.素子間隔は半波長である2.8[mm]としそれぞれの形状において開口径を0.84×0.84[m]に合わせた送信部と,2.8×2.8[m]に合わせた受信部によって得られるアンテナパターンを用いて降雨観測のシミュレーションを行った。また,比較の対象として,現行のパラボラタイプのC帯二重偏波レーダを想定して同様のシミュレーションを行った。シミュレーションの結果より,半球型のアレイを用いることにより,高い時間分解能を維持したうえで,現行の二重偏波レーダと同等の精度で観測を行えることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,アンテナ素子の設計から開始し,アレイ形状を平面型,円柱型,球型の3種を考えて,偏波観測精度の検討を行うことができた。当初考えていた計画以上に,パラボラ型のアンテナが全天観測を行うのにかかる時間が1382[sec]と時間分解能が低いのに対し,設計した固定型c帯二重偏波フェーズドアレイレーダにおいては38.4[sec]と非常に高い時間分解能を実現していることなどがわかった。 また,圧縮センシング理論を応用した高解像度化アルゴリズムの検討なども立命館大のグループを中心に進んでいることから,順調に進捗していると判断することができる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度においては,前年度行った結果をさらに進めて,2次元アレイ形状に基づいた偏波位相差(KDP),レーダ反射因子差(ZDR),偏波間相関係数,垂直レーダ反射因子,水平レーダ反射因子等の偏波パラメータの精度を議論する。さらに,C帯レーダのパルスヒット数やパルス繰り返し周波数などレーダシステムの総合的なトレードオフ検討を行い,成立性と精度を議論する 。また,圧縮センシング理論に基づいたデータ圧縮と空間情報再現のための検討だけでなく,ドップラー周波数領域における降雨エコーの局在性に着目した空間分解能向上の検討を行う。 また,気象庁などのユーザ側でどのような運用が求められているのか,ヒアリングを行い,フェーズドアレイ気象レーダの現業業務へのインパクトと優位性に関して議論を進める。さらに,現在C帯,X帯,Ku帯,Ka帯など,多くの周波数帯における気象用途のレーダが開発,運用されている。こうした現状を整理し,今後の気象レーダのあるべき姿を議論する。
|