研究課題/領域番号 |
17H02071
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
重川 希志依 常葉大学, 大学院・環境防災研究科, 教授 (10329576)
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研究分担者 |
田中 聡 常葉大学, 大学院・環境防災研究科, 教授 (90273523)
立木 茂雄 同志社大学, 社会学部, 教授 (90188269)
佐藤 翔輔 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (00614372)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 住まいの再建 / 生活再建支援 / 住宅確保要配慮者 / 東日本大震災 / 仙台市 / 熊本地震 |
研究実績の概要 |
今年度の研究では、1.「被災者の住まいの再建」に取り組んだ仙台市の生活再建支援業務のプロセスの解明並びに、2.熊本地震の住まいの再建支援の実態把握と地域特性や被害特性に左右される要因の分析を進めた。 仙台市における住まいの再建支援業務内容は、①2011年度:生活再建支援のための体制整備、②2012年度:ロードマップづくりと将来像の提示、③2013年度:生活再建推進プログラムによる支援開始、④2014年度:生活再建加速プログラムによる集中的支援、⑤2015年度:仮設住宅供与の終了、⑥2016年度:被災者から市民へ移行と位置付けられた。さらに被災者の住まいの再建状況との関係性を把握した。結果、1)仙台市震災復興計画で計画期間を5年間としたこと、2)具体的な施策を仮設住宅入居世帯にも提示し施策を実施していったこと、3)仙台市社協等のステークホルダー全ての関係者が前向きに関わり続けたこと、4)再建困難者に早期から集中的に対応したこと、5)早期に仮設住宅入居者の全戸戸別別訪問を実施し収集した情報の集約・活用したことが住まいの再建に大きな変化を及ぼしていた。 また熊本地震に関し、県内15市町村を対象にヒアリング・質問紙調査を実施した。熊本地震では東日本大震災時のサポートセンターを参考に県の主導で地域支え合いセンターが設置され、支援が進められていた。行政との関係性と各地域の被災状況が業務内容に大きく影響しており、被災規模、市町村役場との関係、県庁との関係、仮設住宅入居者の状況があげられた。更に各要因の影響度は自治体ごとに度合や影響を受けた時期が異なっており、県庁からの指示・会議・施策が最も強い影響要因、逆に建設型仮設住宅入居者の再建状況による影響はばらつきがみられた。影響した時期は活動開始当初、仮設入居者最大月、生活支援から再建支援への切り替え時期、仮設供与期間延長開始時期の4つであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究着手以前から継続して仙台市等での被災者生活再建支援業務の支援活動等を通じて築いていた人的ネットワークにより、東日本大震災の仙台市をフィールドとした住宅確保要配慮者への具体的支援のあり方、さらに仮設住宅退去が遅れる世帯の属性や具体駅支援のあり方に関する知見を得ることが可能となり、当初設定していた目的に関して、おおむね順調に研究が進捗していると考えられる。 また2016年熊本地震の被災地を研究対象に広げ、熊本市、益城町、宇城市、西原村において住まいの再建支援業務に中心的に携わる職員を対象に、エスノグラフィー調査を実施した。さらに、得られた知見を検証するため、県内15の地域支え合いセンターを対象とした質問紙調査を行い、12地域から回答協力を得ることができた。 東日本大震災の研究成果に基づき、それが熊本地震の住まいの再建業務にどのように活かされているのか、あるいは活かされていないのか、変化が生じた点は何か等を明らかにすることができた。熊本地震から3年目であるため仮設住宅居住者も半数程度残っており、住宅再建困難世帯への対応もこれから本格化していく。その前段階の研究として位置付けており、今年度はおおむね順調に研究成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災時の事例として研究を行ってきた仙台市での住まいの再建支援業務は2018年度末で終了した。全市民が仮設住宅を退去し新たな住まいでの生活をスタートさせ、研究過程の中で、住宅確保要配慮者とは住宅セーフティーネット法で対象とされている被災者が仮設住宅に取り残されぬよう早期から積極的な支援策を実施したことにより、当初予想されていたような問題は生じなかった。一方、同法で想定されていない市民層の中に、住宅確保に最後まで大きな困難を伴うケースがあったことも明らかとなった。さらに、熊本地震や2018年西日本豪雨災害時には、住宅修理をして居住継続するケースが多く見られたが、ここで問題となったのが、修理のための制度が一本化されていない事や、工務店や大工などの技術者不足により、住宅確保が容易にできないということであった。そこで今後の研究としては、熊本地震の被災地である熊本市・宇城市等においてインタビュー調査と参与観察調査を継続し、住まいの再建プロセスと住宅確保困難事例を分析する。 さらに、2018年西日本豪雨災害時など住宅を修理して住み続けるケースの割合が多い水害被災地において、個別の住宅修理や再建プロセスを解明する。 これらの研究を円滑に実施していくために、研究分担者等と構成する研究会を継続して実施し、調査フィールドごとに得られた研究成果の共有と必要に応じた研究計画の見直し、今後の研究推進方法の策定などを行っていく。
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