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2017 年度 実績報告書

疑似実験的手法を用いた防災政策の実証的評価

研究課題

研究課題/領域番号 17H02072
研究機関関西大学

研究代表者

永松 伸吾  関西大学, 社会安全学部, 教授 (90335331)

研究分担者 松浦 広明  松蔭大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60751914)
直井 道生  慶應義塾大学, 経済学部(三田), 准教授 (70365477)
佐藤 慶一  専修大学, ネットワーク情報学部, 准教授 (90424192)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード差分の差分分析 / 南海トラフ巨大地震 / 人口移動 / 生活再建 / 防災投資 / 原子力災害
研究実績の概要

疑似実験的手法による防災政策の評価研究を実施した。第一に、南海トラフ巨大地震の被害想定が被災地の人口移動に及ぼす影響について、国勢調査データを基にDifference in Difference (DID)の手法を用いて分析を行った。その結果,想定津波高の引き上げやその水準が想定被災地の人口転出を増加させ,転入を抑制する効果を持つことが明らかになった。また、東海地震に係る地震防災対策強化地域への指定状況によって影響が異なるかを検討したところ、従来から対策地域に指定されていた自治体では、2012 年の想定の公表が転出行動におよぼす影響は小さくなるという結果が得られた。
第二に、居住地選択において、人々は福島県を避ける傾向があるのかどうかを、DIDにより分析を行った。県境の市町村において福島県側の人口流入は少なく、しかもその傾向は東日本大震災以降にみられることから、原発事故により福島県を居住地として敬遠する動きがみられることが明らかになった。
第三に、被災者の生活支援サービスの効果のDIDによる分析に着手した。釜石市の仮設住宅、復興公営住宅、および自力再建世帯へのアンケート調査を実施した。現在1180通ほどのアンケートが回収されている。とりわけ、釜石市の復興公営住宅と一般住宅とは近接して立地しており、公営住宅には支援連絡員と呼ばれる人々が訪問巡回を行っているものの、一般住宅にはそのような支援が行われていない。これら両者を比較することで、釜石市の支援連絡員事業の効果を測定することができる。今年度はこのデータの入力および分析を行う予定である。
第四に、地方財政制度が防災投資のインセンティブに与える影響の分析に着手した。すでに2005年~2015年の市町村財政のデータの入力が終了している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の計画にあった初年度の研究はすべて実施した。また、研究分担者全員による共著論文を内閣府社会経済総合研究所のワーキングペーパーとして出版することができた。これらの内容について、ニューヨークにおいて9月に開催されたInternational Conference on Sustainable Development(ICSD)にて発表することができた。以上のように極めて順調に研究は進捗している。
なお、翌年度以降予定されていた地震保険に関する研究と耐震改修に関する研究については、実施を見送った。地震保険に関する研究は、過去のデータの収集に困難があること、また予算減額により十分なサンプル数の確保の保証がないことが理由である。耐震改修に関する研究は、自治体へヒアリングした結果、こちらも十分なサンプルが確保できないことが明らかになった。こうしたことから、研究そのものについて見直すこととなった。
他方で、釜石市や同市内のNPOと連携して釜石市の被災者生活支援に関する研究に着手することができた。これは研究の大目標である防災政策の疑似実験的手法による分析に適ったものである。この研究のためのアンケート調査を、翌年度予算の前倒し交付制度を用いて実施することができた。合計約4000通ほど配布して、3月末までに1200通ほどの回収ができた。

今後の研究の推進方策

(1)すでに発表したワーキングペーパーについては英訳して国際的ジャーナルに投稿する予定である。また、国際学会においてこれらの研究発表を行う。
(2)釜石市の生活再建支援に関する研究については、今年度5月までにデータの入力作業を行い、7月までに分析を行う。その結果について、釜石市の行政職員や現在被災者支援に従事しているスタッフらと共有し、現実の政策に反映する機会を設ける。これらの研究成果は今年度内に学術論文として出版する予定である。
(3)地方財政制度と防災投資のインセンティブに関する研究については、今年度分析を行い、来年度初めに学術論文としての発表を目指す。研究分担者の直井が現在南カリフォルニア大学に在外研究中であり、研究期間中に訪米してこれらの研究の打ち合わせを行う。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件) 図書 (2件)

  • [国際共同研究] University of Southern California(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of Southern California
  • [雑誌論文] Household Mortgage Demand: Role of Mortgage Market Institutions2018

    • 著者名/発表者名
      Naoi, M., P. Tiwari, Y. Moriizumi, N. Yukutake, N. Hutchson, A. Kovlyakova and J. Rao
    • 雑誌名

      International Journal of Housing Markets and Analysis

      巻: 近刊 ページ: 近刊

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 想定首都直下地震の危機対応学2018

    • 著者名/発表者名
      佐藤慶一
    • 雑誌名

      京大学社会科学研究所 全所的プロジェクト研究 危機対応の社会科学(危機対応学) ディスカッションペーパーシリーズ

      巻: 4 ページ: 27

  • [雑誌論文] 住宅・土地統計調査を利用した分析2018

    • 著者名/発表者名
      佐藤慶一
    • 雑誌名

      統計

      巻: 2018年3月 ページ: 19-25

  • [雑誌論文] 南海トラフ巨大地震による想定津波高と市区町村間人口移動の実証分析2018

    • 著者名/発表者名
      直井道生、佐藤慶一、永松伸吾、松浦広明
    • 雑誌名

      New ESRI Working Paper

      巻: 45 ページ: 43

    • DOI

      http://www.esri.go.jp/jp/archive/new_wp/new_wp050/new_wp045.pdf

  • [雑誌論文] The Asymmetric Housing Wealth Effect on Childbirth2017

    • 著者名/発表者名
      Iwata, S. and M. Naoi
    • 雑誌名

      Review of Economics of the Household

      巻: 15(4) ページ: 1373-1397

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1007/s11150-016-9355-8

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 想定首都直下地震後の応急居住広域化の可能性と政策的検討2017

    • 著者名/発表者名
      佐藤慶一
    • 雑誌名

      地域安全学会論文集

      巻: 31 ページ: 155-166

    • 査読あり
  • [学会発表] Natural Hazard Information and Migration across Cities: Evidence from the Nankai Trough Earthquake2017

    • 著者名/発表者名
      Naoi, M.
    • 学会等名
      International Conference on Sustainable Development 2017
    • 国際学会
  • [学会発表] Natural Hazard Information and Migration across Cities: Evidence from the Nankai Trough Earthquake2017

    • 著者名/発表者名
      直井道生
    • 学会等名
      応用地域学会2017年研究発表大会
  • [学会発表] Recent Japanese Cases and Problems of Widespread Migration Following Massive Disasters2017

    • 著者名/発表者名
      K. Sato
    • 学会等名
      International Conference on Sustainable Development 2017
    • 国際学会
  • [学会発表] 利用目的に応じたミクロシミュレーションモデルの調整と課題2017

    • 著者名/発表者名
      佐藤慶一,伊藤伸介,松浦浩明
    • 学会等名
      2017年度経済統計学会大会
  • [学会発表] 都心商業集積地の防災課題の整理と対応策の具体化2017

    • 著者名/発表者名
      佐藤慶一,大矢根淳,吉井博明
    • 学会等名
      日本災害情報学会第19 回学会大会
  • [学会発表] クライストチャーチ地震における意見集約事業の実際2017

    • 著者名/発表者名
      小林秀行,佐藤慶一
    • 学会等名
      日本災害情報学会第19 回学会大会
  • [学会発表] ‘Building Back Better’ Tohoku: A Contradicting Evidence2017

    • 著者名/発表者名
      Shingo Nagamatsu
    • 学会等名
      Integrated Disaster Risk Management (IDRiM) Society
    • 国際学会
  • [学会発表] Probabilistic or Deterministic: which risk does market reflect on land prices?2017

    • 著者名/発表者名
      Kengo Imaizumi and Shingo Nagamatsu
    • 学会等名
      International Disaster Risk Conference
    • 国際学会
  • [図書] マイナス金利下における金融・不動産市場の読み方(第14章「家計の流動性制約と転居行動の実証分析」を分担執筆)2017

    • 著者名/発表者名
      瀬古美喜・隅田和人・直井道生
    • 総ページ数
      256
    • 出版者
      東洋経済新報社
    • ISBN
      978-4492961285
  • [図書] The Fukushima and Tohoku Disaster: A Review of the Five-Year Reconstruction Efforts2017

    • 著者名/発表者名
      Faculty of Social Safety Sciences, Kansai University ed.
    • 総ページ数
      354
    • 出版者
      Elsevier Inc.
    • ISBN
      9780128140789

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-05-20  

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