研究課題/領域番号 |
17H02074
|
研究機関 | ふじのくに地球環境史ミュージアム |
研究代表者 |
菅原 大助 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 准教授 (50436078)
|
研究分担者 |
北村 晃寿 静岡大学, 理学部, 教授 (20260581)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 地下レーダー / GPR / 浜堤列 / 牧之原市 / 静岡県 |
研究実績の概要 |
本研究では、①地中レーダー(GPR)を用いた海岸地形の構造調査,②ボーリング試料の分析と年代測定,③古地形復元を含む数値的検討を行う. ①GPR調査:平成29年度の調査で良好な結果を得た牧之原市で3つの測線を設定して追加調査を行い、地層状況を詳しく検討するとともに、ボーリング調査の候補地を検討した。海岸から約2km内陸までの地下構造を連続的に観察した結果、現在の海岸線から内陸方向に1kmの範囲は汀線が連続的に海側に移動してきたことを示す地層データを取得できた。これよりも内陸では、比高1~2mの浜堤の間に、堤間湿地とみられる地層の分布データを取得できた。取得データを基に、ボーリング調査の候補地を検討し、8箇所を選定した。 ②ボーリング試料の分析と年代測定:GPR調査の結果を踏まえ、牧之原市細江および静波で合計8箇所、計50m分の柱状試料を採取した(6箇所で深さ5m、2箇所で深さ10m)。いずれも、ボーリングコアの下部は主に細粒砂からなり、上位に向かって粗粒化する傾向を示している。砂礫層が多数挟まれており、下位層準との境界はイベント堆積物である可能性を示している。コアの1つでは砂層中に厚さ1mほどの分解の良い泥炭層が認められた。バルク試料7点を採取して14C年代測定を行った結果、1570±30calBPから2370±30calBPの年代値が得られた。 ③古地形復元:国土地理院による5mメッシュ標高データを用いてGPRデータの地形補正を行い、現地形面の起伏と旧汀線の関係について検討した。現在の海岸線から700m~1700mの範囲では、浜堤の形成とともに汀線が断続的に海側に移動していることが判明した。泥炭層の年代値を踏まえると、現汀線から700mの位置にある浜堤は、約2400calBP以前の旧汀線に対応すると推定される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、GPR調査、ボーリング、地形復元とも概ね計画通りに研究を進めることができた。GPR調査によるデータを基に調査地点の候補を選定し、ボーリングを実施する研究フローは想定どおりの進捗であった。研究対象地域の大部分は高度な土地利用がなされており、ボーリング用地の確保は大きな課題であった。今年度は、主に官地を中心に交渉を進め、ほぼ予定どおり数量の柱状試料を採取できた。試料の粒度分析は、学生の助力を得て実施中である。一方、採取したコア中の砂層・砂礫層には測定可能な植物片や貝殻などが含まれていないことから、年代測定は調査地点のうち1箇所で確認された泥炭層のみで行った。分解の良い泥炭のバルク試料による測定は、北海道・東北地方の津波堆積物調査で実績のある手法である。今年度得られた年代値7点は逆転も少なく、地層データの解釈に有用な結果であった。しかし、当地域でより多くの地点・層準から年代値を得るためには、今後、光ルミネッセンス法による砂礫層の年代測定が必要になってくると考えられるため、外部の専門家に協力を打診する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度に牧之原市で採取したボーリング試料の分析を進める。8箇所・50mの試料に対して、特に重要と考えられる層準・イベントを特定し、追加の年代値を得ることが重要と考えられる。年代値については、昨年度得られた値が約1600~2400年前に相当することから、より新しい時代の年代値を得るため、外部の専門家に光ルミネッセンス法による測定を依頼するか、追加のボーリングを行って14Cで測定可能な試料の採取を試みるなどの対応を検討する。また、採取試料の粒度・鉱物組成の分析を元に地点間の地層対比を行い、地形形成イベントの認定を試みる。昨年度採取したボーリング試料の泥炭層中からはイベント砂層が複数確認されている。他地点の試料分析も進めつつ、津波堆積物の可能性の有無について検討する。また、静岡市清水区の三保半島でGPR調査を行い、過去の地震・津波と地形発達過程の関係について追加のデータを取得する。
|