研究課題
本研究では、①地中レーダー(GPR)を用いた海岸地形の構造調査,②ボーリング試料の分析と年代測定,③古地形復元を含む数値的検討を行う.①GPR調査:1498年の明応地震では、地殻変動や津波の影響により当時の浜名川河口の周辺に今切口が形成され、浜名湖が外洋と接続されたとされている。旧河口はその後の砂丘の発達で埋没したと考えられる。そこで、湖西市において明応地震以前の河口の位置や地層状況を把握するためのGPR調査を行った。その結果、湖西市新居町浜名において、幅100~150mの窪みが砂丘に埋没していることを確認した。絵図による旧河道の形状も考慮すると、旧浜名川の河口地形であると考えられる。静岡市清水区村松において浜堤の内部構造を明らかにするためのGPR調査を行った。その結果,表層3mの部分が海側に傾斜した地層で形成されていることが判明した.この構造は,浜堤が海側に成長したことを示唆している。②ボーリング試料の分析と年代測定:駿河湾西岸でのプレート境界型地震による隆起や海岸地形の変化を検討するため、静岡市清水区村松で長さ12 mのボーリング試料を採取した。現在、地層観察および試料分析を実施中であり、地震イベントや海浜地形の変化に関連する可能性のある地層を確認している。また、昨年度までの調査により、駿河湾西岸での隆起を伴う地震の痕跡に関するデータを得られたため、その結果をとりまとめ、国際誌Progress in Earth and Planetary Scienceに学術論文として公表した。③古地形復元を含む数値的検討:本年度は、古地形復元のためのデータ収集と整理のみを実施した。
3: やや遅れている
本年度の研究の進捗は当初計画に対して遅れが生じている。静岡市清水区村松のGPR調査では、浜堤の形成過程を示すデータを得ることができ、その成果を基に論文を発表した。昨年度までの研究結果から、清水区周辺は有望な調査地点と考えられたため、追加調査を計画した。しかし、同区の三保半島での予察的なGPR調査および堆積物調査が不調であったため、計画見直しが必要となり、ボーリングの実施に遅れが生じた。その後、本年度に採取したボーリング試料の分析は、学生の助力を得て実施中である。
本年度は、昨年度までに静岡県内で得たGPR調査データを整理し、海岸地形の形成過程の検討を進める。データが不足している地点については、感染症流行に伴う社会情勢の推移を見極めつつ、追加の調査を行う。昨年度および本年度に牧之原市と静岡市で採取したボーリング試料の分析を引き続き進め、両地域での海岸地形の形成年代と地震・津波発生年代を検討する。年代測定用試料の採取は大きな課題であり、軟体動物殻や泥炭質土壌を中心に、掘削試料からの回収を試みる。また、光ルミネッセンス法の適用についても引き続き検討する。これまでに収集・整理した地形データとGPRデータを統合して古地形復元を行い、地震・津波の数値的検討を行う。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Progress in Earth and Planetary Science
巻: 6 ページ: 57
10.1186/s40645-019-0305-y