研究課題
潰瘍や癌がないにも関わらず胃痛や胸やけを訴える疾患を「機能性ディスペプシア」と呼び,消化管運動障害がその原因と考えられている.しかしながら,健常な場合でさえも胃内部の食物流動を可視化できないため,この疾患のメカニズムは十分明らかになっていない.本研究の目的は,我々の計算力学解析とオークランド大学の電気生理学解析の統合的解析を生理学的な条件から病理的な条件まで包括的に展開し,機能性ディスペプシアの病態メカニズムを解明することである.平成30年度は,蠕動運動の加速現象の生理学的意義を多角的に解明するため,平成29年度に開発した胃‐幽門‐十二指腸の計算力学モデルを用いて,食物の貯留・撹拌・排出機能を解析・評価した.正常な食物の撹拌や排出には,胃や幽門の運動機能が適切に協調していることが必要である.しかしながら,例えば,幽門の開閉運動は,機能的疾患や外科的手術によって損なわれることがある.ここでは,胃壁の蠕動運動と幽門の開閉運動の協調が,食物の撹拌・排出機能に与える影響を明らかにするため,大規模なパラメトリック解析を実施した.特に,Terminal antral contractionと呼ばれる胃壁の運動と幽門の開閉運動の関係に着目し,胃における撹拌効率および十二指腸への排出速度を定量的に評価した.この数値解析により,胃と幽門の運動機能が適切に協調しないことによって,排出速度遅延や十二指腸から胃への逆流が生じることを示した.
1: 当初の計画以上に進展している
興奮伝播の多極電極マッピングデータについて,既に一部の計測結果が得られており,これに対する計算モデルの開発を開始しているため.
オークランド大学と連携し,疾患に関するデータの取得およびモデルの構築を強化する.
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