研究実績の概要 |
本研究課題では、これまでマウス骨格筋細胞系を用いて開発してきた電気パルス刺激(EPS)特殊培養システムに改良を加えることにより、健常者のみならず、高齢者や腱板断裂患者から採取単離した筋衛星細胞を用いた「運動できる培養ヒト筋細胞系」を構築することを目的としている。 昨年度はヒト筋細胞の脆弱性を補強する目的でフィーダー細胞との混合培養系を構築することに成功した。H30年度は混合培養系をさらに発展させたマウス筋芽細胞株と初代ヒト筋芽細胞(筋衛星細胞)とのハイブリッド筋管細胞系を新たに構築した。これは筋分化にともない筋芽細胞同士が融合して多核の筋管細胞となる特性を利用したものであり、この異種ハイブリッド筋管細胞を作製してEPS特殊培養系へと導入することにより極めて高い収縮能力を獲得させることに成功した。さらに、このハイブリッド筋管細胞の運動刺激応答性の生物反応(各種マイオカイン遺伝子群の発現亢進)について、種差を考慮したRT-PCR手法を開発することにより、ヒト由来およびマウス由来の各々の遺伝子発現変動を正確に評価することを可能にした。さらに、種差を考慮したBioPlexアッセイ法によりヒト由来マイオカインを正確に計測することに成功し、収縮活動負荷によってインターロイキン類 (IL-6, IL-8, IL-10, and IL16), CXC ケモカイン類 (CXCL1, CXCL2, CXCL5, CXCL6, CXCL10), CCケモカイン類 (CCL1, CCL2, CCL7, CCL8, CCL11, CCL13, CCL16, CCL17, CCL19, CCL20, CCL21, CCL22, CCL25, CCL27), さらに IFN-γの分泌増加が誘導されることを見出した。また、EPS特殊培養系へと適応できる領域限局導電型のインサートチェンバ-を新たに開発した。
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