研究課題/領域番号 |
17H02078
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
吉原 利忠 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (10375561)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | りん光 / イリジウム錯体 / 酸素 / 細胞 / スフェロイド / りん光寿命 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,イリジウム錯体を基軸としたマルチカラー発光酸素プローブ分子を設計・合成し,3次元培養された積層細胞内や細胞塊(スフェロイド)内の酸素濃度および濃度分布を,共焦点顕微鏡を用いて高感度,非侵襲的にリアルタイム計測・イメージングすることである。 平成29年度は,イリジウム錯体の補助配位子にエチレンジアミン類を用いたカチオン性イリジウム錯体の合成を行い,スペクトル特性や光物理特性に関する測定を行った。また,細胞移行性の実験からエチレンジアミンの窒素原子の結合した水素をアルキル鎖に置換下化合物において高い細胞親和性およびスフェロイド透過性が向上することを見出した。さらに,水酸基を有するイリジウム錯体も開発したところ,カチオン性イリジウム錯体と同様にスフェロイドに浸透することが明らかとなった。 装置開発では,申請書において導入を予定していたスーパーコンティニュウム白色光源を購入し,共焦点蛍光・りん光寿命顕微鏡の光源として設置した。これを用いることで,様々な波長領域に吸収を示すイリジウム錯体を選択的に光励起できることが可能となった。 これら開発したイリジウム錯体と共焦点蛍光・りん光寿命顕微鏡を用いることでスフェロイド内部が低酸素状態になることを定量的に示した。また,低酸素状態はスフェロイドの大きさに依存しており,大きいスフェロイドほど内部がより低酸素状態になることが分かった。これは,外側の細胞が酸素を消費するため,内部細胞まで酸素が十分に拡散できないためであり,組織においても毛細血管からの距離に依存して酸素濃度が変化することが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,可視光領域にりん光を示すカチオン性イリジウム錯体の合成,および溶液中における物性評価を行った。また,細胞内移行性や細胞内におけるりん光特性に関する実験を行った。その結果,高い細胞親和性を示すイリジウム錯体の構造やスフェロイド内における酸素濃度勾配について明らかにした。さらに,スーパーコンティニュウム白色光源を,共焦点蛍光・りん光寿命顕微鏡の光源として設置することで,任意のイリジウム錯体を選択的に光励起できるシステムの構築を行った。 以上の結果は,平成29年度に達成すべき目標であることからおおむね順調に研究が遂行できたと考えている。現在,成果を投稿論文にまとめている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は可視光領域にりん光を示すイリジウム錯体の開発を行った。平成30年度は,近赤外光領域にりん光を示し,また,スフェロイド親和性を有するイリジウム錯体を設計・合成する。開発したイリジウム錯体および共焦点蛍光・りん光寿命顕微鏡を用いて,スフェロイド内部の酸素濃度に加えて,他のバイオイメージングプローブも併用して,酸素濃度と細胞の代謝過程の相関に関する研究を実施する。
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