研究課題
主に天然高分子化合物の混合物を用い、血中成分と素早く反応して塞栓効果を発揮するための組成物創出を目的とする本課題について、2017年度においては、当初計画のとおり、天然物基盤の塞栓材料組成のスクリーニング、および、血管内壁接着特性など評価した。具体的な成果としては、(i) 基本的な要求性能を満たし得る多糖系塞栓剤組成を見出し、(ii) 血管モデルを用いる内壁接着特性評価装置を制作、(iii) 左記 (ii) の装置により、血管モデル内壁への最大接着力 200-220 mmHg に到達する塞栓剤を試作することができた。さらに (iv) シルクタンパク質の化学リン酸化により、カルシウムイオン応答性を有する新規塞栓剤素材を創出し、また、(v) セルロース酸化物の化学反応性を利用する接着力向上のための化合物を作成した。これらの成果により、次年度以降の研究課題推進において必要な要素部材を揃えることができたと考えている。
2: おおむね順調に進展している
研究業績の概要において記載した各項目における進捗を記す: (i) 主に酸性多糖とセルロース誘導体の組み合わせにより、塞栓剤として求められる血管内壁接着力を満たし得る強度、マイクロカテーテルから血管内注入可能な粘性抵抗、かつ、血中カルシウムイオン濃度における即座の凝固能、を併せ持つ組成を特定できた。(ii) 血圧センサーと小型タッチスクリーンパネル操作・データ表示と記録が可能な装置を設計し、動物血管モデル系としておもにアクリルアミドゲルを利用する評価システムを試作した。(iii) 塞栓剤体積 1 mL以下、かつ、モデル血管内径 2 mm において、表記の接着力を有する組成を見出した。(iv) 化学リン酸化方を複数施行し、規格化リン酸化率 30-40% の化学修飾シルクフィブロインを創出した。(v) セルロースを過ヨウ素酸により酸化し、ジアルデヒドセルロースに誘導した修飾体を試作した。アルデヒドと血管内壁タンパク質との化学反応により、塞栓剤の接着力を向上できると期待される。
現在までの進捗に記載したように、(i)-(v) の実験用部材および素材を利活用しつつ、当初計画のとおり推進する。2017年度において挿入した設備備品である血管モデル、および、血管内皮細胞との親和性評価のための蛍光顕微鏡装置を用い、(vi) 上記 (i)-(v) の組成からなる塞栓剤について、マイクロカテーテルからの注入操作における問題、凝固性能、シリコンモデル内壁への接着特性、などのパラメータを評価し、さらに (vii) 2017年度において、上記 (iv) のリン酸化フィブロインが骨芽細胞に対し良好な親和性を示した結果を受け、上記 (i)-(v) の組成からなる塞栓剤の血管内皮細胞培養系における特徴を明らかにする。酸性多糖を基盤とする塞栓剤組成物については、引き続き、権利化のための手続きを進める。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件) 学会発表 (4件)
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