研究課題/領域番号 |
17H02080
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大川 浩作 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60291390)
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研究分担者 |
結城 一郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60301537)
馬目 佳信 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30219539)
野村 隆臣 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (90362110)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 液体塞栓物質 / in vitro 試験 / 天然高分子 / 水溶液を基盤とする組成物 |
研究実績の概要 |
主に天然高分子化合物の混合物を用い、血中成分と素早く反応して塞栓効果を発揮するための組成物創出を目的とする本課題について、2018年度においては、当初計画のとおり、天然物基盤の塞栓材料組成のスクリーニング、および、血管内壁接着特性など評価した。具体的な成果としては、(i) 基本的な塞栓性能を満たし得る多糖系組成のさらなる検討、(ii) 血管奇形モデルを用いる塞栓性能評価の新規実施、(iii) 左記 (ii) の装置試験結果からフィードバックされた組成改良、(iv) 血管造影分子共存下における造影性能・塞栓性能との両立、に関する新たな知見を得た。さらに (v) これまでのスクリーニングから得られた候補組成について、主に小動物臓器を用いる in vivo での塞栓性能試験を実施した。その結果、幾つかの改善点が新たに特定され、2019年度以降において特にエフォートを割くべき課題複数・問題低減のためのアプローチを提案・個別試験することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究業績の概要において記載した各項目における進捗を記す: (i) より高い濃度において酸性多糖水溶液を液状 (ゾル状態) に保つための手法を見出した。これにより、塞栓剤として求められる血管内留置後の機械強度、および、マイクロカテーテルから血管内注入可能な粘性抵抗、かつ、血中カルシウムイオン濃度における即座の凝固能、を併せ持つ組成を特定できた。(ii) 心臓拍動時の液圧・流速と同等条件における試験では、上記 (i) の機械強度性能において、さらなる改善を要することが明らかになった。(iii) 種々の天然高分子の組み合わせを (ii) における要求性能を満たすべく試験対象とした。その結果、注入前の液体粘性低減と留置後の機械強度向上というトレードオフを、可能な限り両立するという課題が浮上した。組成最適化のための工夫と、項目 (iv) を同時に進めた結果、血管造影分子は、濃度依存的ではあるが、塞栓性能に負の影響をもたらす場合があることが判明した。(v) 上記 (ii)-(iv) の改善点の解消とともに実施されたin vivo 試験では、血管造影装置のモニター上において、注入時の塞栓剤の挙動を観察することができ、同時に、目的の血管部位の塞栓に至った実施例複数を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗に記載したように、(i)-(v) の実験用部材および素材を利活用しつつ、当初計画のとおり推進する。2018年度において得られた知見においては、塞栓性能発現に必須の高分子化学的因子をある程度特定することができたので、さらなる塞栓性能改良にエフォートを払いながら、同時に、上記因子の血管内皮細胞に対する影響などを含め、細胞培養系を用いる試験を実施したい。研究期間開始から 2 年経過した現時点においては、開発における顕著な律速段階・ボトルネック、または、開発を断念せざるを得ないような致命的な問題は発生していない。進捗項目 (i) に記載した、有効な塞栓効果を持つ組成は、代表者らによる発明として、日本国内特許・権利化が完了した。2019年度以降の 2 年間においては、本報告書に記載した海外研究機関との共同体制のもと、研究代表者自身が出向・研究調査を実施し、次段階である認証過程に必要な知見を得るための実験計画策定・in vivo 試験を進める予定である。
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