研究課題/領域番号 |
17H02087
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
酒井 宏水 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (70318830)
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研究分担者 |
松平 崇 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20570998)
山本 惠三 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90254490)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人工赤血球 / 解糖系酵素 / NADH / メチレンブルー / 一酸化炭素 / リポソーム / 酸素輸送 |
研究実績の概要 |
① NADHによるmetHb生成抑制の機序に関する検討: NADHを人工赤血球(ヘモグロビンベシクル, Hb-V)粒子内に濃度高く内包させるとメト化(metHb生成)を抑制するin vivo結果を得た。NADHはHbO2と共存すると擬似カタラーゼ活性および擬似SOD活性を呈することがその機序と考えられた。また、H2O2, NO, NO2-などのメト化促進剤に対しても、NADHの共存によりメト化を抑制した。NADPHも同様の抗酸化的効果を示したが、NADHに比較して安定性に乏しく、長時間にわたるメト化抑制効果ではNADHの方が優れていた。擬似酵素活性について、HbO2に結合するIHPやDPGが拮抗阻害することから、IHP, DPGの既知結合サイトにNAD(P)Hが比較的弱く結合すると推定された。ドッキングシュミレーションから、NAD(P)Hが、α鎖Arg141やLys99に約3A以下で結合し、その近辺のへムとNAD(P)Hのニコチンアミドが電子授受の可能な約10A以下の距離にあると推定された。
② 赤血球解糖系の電子エネルギーの活用によるmetHbの間接的な酵素的還元: 赤血球が産生する電子エネルギーをメチレンブルー(MB)により細胞外に引き出し、Hb-V粒子内のmetHbを還元することをin vivo試験から既に明らかにしている。これを受けて、MBと類似の色素を選定し、ラットへの単回投与試験によりmetHb還元効果を検討したところ、一連のPhenothiazine系の電子伝達物質が有効であり、特にAzure Bの効果が優れていた。
③ CO中毒モデルの作成と脳神経系への影響の評価法確立: 3000ppmのCOガスに暴露されたWistar系ラットの循環動態、血液ガス組成、脳組織病理の変動について結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工赤血球のメト化を抑制する方法の探索については、NADHを共存させる方法、また電子伝達物質を使って赤血球の解糖系が産生する電子エネルギーを利用する方法のそれぞれについて進展し、また機序も明らかになり、学会発表ならびに論文印刷するに至った。CO中毒モデルの作成についても、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
メト化抑制の機序については、更に詳細を検討する。また、CO中毒モデルの脳神経系に与える影響について様相を明らかにするとともに、CO-HbV投与との比較をみる試験を進める。また、脊髄虚血性モデルを作成し、CO-HbVの投与効果についても明らかにしたい。
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