研究課題
① NADHによるmetHb生成の抑制の機序:NAD(P)HがHbと共存すると、擬似カタラーゼ活性、擬似SOD活性を示し、HbVに内包することによりメト化の遅延がみられる。ヒトHbのみならずウシHbでも同様の効果がみられた。また、ヒトHbはIHPや2,3-DPGが拮抗阻害作用を示し、31P-NMRにより、1:1比で結合していること、ドッキングシミュレーションから、Hbに対する結合部位が想定された。α鎖の方がβ鎖よりもNADHの保護効果を受けやすいことなどから、α鎖に結合していることが確実と考えられた。NADHとHbの結晶化を試みたが結晶化は成功せず、詳細な部位の特定には至らなかったが、NADHとHbの相互作用の部位を多角的検討から推定することができた。これらの成果はACSの雑誌二報に報告したので、周辺状況も取り入れ総説原稿として投稿予定である。他方、Fish Hbの酸化抑制についてスウェーデンとの国際共同研究を行った。 ② 赤血球解糖系の電子エネルギーの活用によるmetHbの間接的な酵素的還元:赤血球が産生する電子エネルギーを用い、メチレンブルー(MB)の投与によってこれを引出し、HbV粒子内のmetHbを還元することについて、MBの反復投与によってHbVの酸素運搬機能の延長を達成した結果を論文とし発表した。また、MBよりも優れたPhenothiazine系の電子伝達物質Azure Bを見出したので、今後、HbVの酸素運搬機能の更なる延長が期待できる。 ③ CO中毒モデルの脳神経系への影響の精査と、CO-HbV投与の影響との比較:3000 ppmのCOガスに暴露されたWistar系ラットについて、循環動態、血液ガス組成、脳組織病理の変化を得たので、CO-HbVを投与した場合と比較検討を進め、脳組織(海馬)のHE染色、8-OHdG染色画像、壊死細胞数の検討からCO-HbVの毒性は極めて軽微であることを明らかとし、国際学会(17th-ISBS)で発表した。さらに、出血性ショック蘇生モデルに投与し、脳組織保護効果を期待する試験を進めた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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