研究課題/領域番号 |
17H02089
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
清水 達也 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (40318100)
|
研究分担者 |
関谷 佐智子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00398801)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 腎発生 / オルガノイド / 気ー液界面 / 灌流 |
研究実績の概要 |
前年度において誘導法を安定させたiPS細胞からの腎オルガノイドを用いて気―液界面培養と液浸培養を比較し、気―液界面培養にて構築した腎オルガノイドを液浸培養に変えると内部構造が崩壊することが明らかになった。そこで、気―液界面培養および灌流培養を3日間行ったところ、培養液を3.6mL/day使用する灌流培養で十分に培養液中の糖代謝は変わらないものの、乳酸排泄を抑制し、細胞骨格を発達させることが明らかになった。また、気相のオルガノイド内への培養液の浸透を解析するために培養に蛍光物質を混合し、灌流を行った結果、静置培養と比較すると、培養液の浸透を示す蛍光色素がオルガノイドの厚み方向により広く分布することが明らかになった。このような検討は他に例を見ず、本研究で開発した気―液界面培養灌流デバイスは気相において微小の液体が液相から浸潤、多孔膜を介し液相の流れの影響微小に享受されることが実証された。前年度までに気相のメンブレン上にマイクロビーズの懸濁液を入れ、かん流した際にも流量に応じたマイクロビースの動態が観察されたため、確実性が高まっている。従って、膜上気相への影響は液相の流量に影響を受け、ゲルやその他物質を用いた灌流よりも溶解や変化が生じないため、長期灌流への可能性が示唆されている。このような腎オルノイド内部構造は流量の影響により、管構造の発達を変化させることが考えられ、流量による分化必要分泌因子の分布変化と発生への影響が考えられ、生体内でも同様なことが生じうるのか、今後は外挿性の検討を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では腎臓のオルガノイドを用いた血管系を介したメカニカル・ストレスの腎発生への影響を生体外にて解析する目的で進行している。しかしながら、採用した腎オルガノイド誘導法(Takasato et al 2015 Nature)で生じる血管内皮細胞のネットワーク構造は腎臓の発生が進むとともに減衰する傾向がある。本研究でも時期がずれており、糸球体上皮細胞が生じる時期には内在性の血管内皮細胞は減少し始める。そのため、外部からの血管内皮細胞の挿入なども試みたが、通常行われている血管内皮細胞、および内部から抽出する内皮細胞は腎オルガノイドとなった後に懸濁液等で挿入しても排除される。このことは近年報告されている(Homan KA, Gupta N., et al.,2019 Nature methods)腎オルガノイドのゲル内灌流培養においても別の誘導法にも関わらず、時期、細胞種など類似した結果が得られており、共通事項と考えられる。同報告でもある血清添加により確かに血管内皮細胞のネットワーク構造を増加させることは可能であるが、糸球体上皮細胞近くに内皮細胞は遊走するが、生体外で糸球体血管を生体内のように作成することは世界的にも未だ達成できていない。そのため現状で可能な腎オルガノイドの特性を活かし、本検討を進めており、内皮細胞の導入と糸球体血管構築に際しては分担研究者として関谷博士を追加、加速進行を試みる。
|
今後の研究の推進方策 |
腎臓発生時は非常に多くの分泌因子が働き、成熟化が進行していく。この鋭敏な時期に生じるメカニカルストレスが最終的な発生の進行度にどういった影響を与えるのか、その影響のメカニズムを含めて解析を進めていく予定である。具体的には、生体に起こりうる腎発生時のメカニカルストレス変化として考えられる高血圧時の妊娠と腎発生に着目している。しかしながら、胎児血流は解析が難しいため胎児における腎発生の比較を考えている。高血圧モデル動物より得られる胎児の腎での変化と生体外灌流時に流量や低酸素化した際の変化を構造、発生度、遺伝子発現、エピジェネティック変化と比較検討することで類似点の有無を検討し、他に類をみない胎内再現系としての可能性を追求する。このため、系の安定化、および比較検討のための多連化が要求され、工学的バックグランドをもつ菊地博士を分担者に追加して、さらに研究遂行を加速する予定である。
|