研究課題/領域番号 |
17H02090
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岩崎 清隆 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (20339691)
|
研究分担者 |
伊藤 匡史 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10328429)
川村 公一 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), 客員上級研究員(研究院客員教授) (00091801)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 脱細胞化組織 / 膝前十字靭帯再建 / 生体内再生 / 組織再構築 / 脱細胞化 |
研究実績の概要 |
スポーツで発生することの多い膝前十字靭帯損傷の治療においては、本来採る必要のない健常な自家腱を術中に採取して再建組織として用いており、自家組織の採取を必要としない人工靭帯の開発が求められている。本研究では、研究代表者が開発した厚さ10mm以上の腱および靭帯組織を損傷なく脱細胞化して抵抗原化する技術と、生体組織の強度保持を実現する滅菌技術を用い、臨床で再建組織として用いられる腱組織とヒトでは運動機能の低下の点から採取できない靭帯組織を用い、脱細胞化した細胞外マトリクスの構造の違いが生体内での細胞浸潤に影響を及ぼすか、また、生体内で脱細胞化した組織が再構築されるかを解明することを目的とした。 脱細胞化処理して滅菌処理したウシ腱およびウシ靭帯組織を用いてヒツジの膝前十字靭帯再建実験を行い、3ヶ月後に組織を摘出し、細胞浸潤を組織学的染色により調べた。また、脱細胞化処理したコラーゲン組織自体が生体内で再生するかを検証することを目指し、脱細胞化した腱および靭帯、そしてヒツジ膝前十字靭帯再建3ヶ月後に摘出した組織について、透過型電子顕微鏡を用いてコラーゲンの径を計測して比較した。その結果、再建3ヶ月後の脱細胞化ウシ腱およびウシ靭帯組織のどちらにおいてもヒツジ自家細胞が浸潤し、微小血管が多く形成されることが明らかとなった。再建前の脱細胞化処理した腱および靭帯のコラーゲン線維の径は0~380nmの範囲で分布し、腱組織の方が太いコラーゲン線維で構成されていた。再建3ヶ月後には、腱組織、靭帯組織のどちらの組織においても40nm~80nmの径のコラーゲン線維がほとんどを占め、生体内で組織が再構築されることが、より人に近い力学的負荷が膝に作用する大動物実験で明らかとなった。 今後、1年の期間の動物実験を行い、生体内でコラーゲン径が太くなり、自己組織化が起きていくのかを検証していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脱細胞化ウシ腱および靭帯組織を用いてヒツジ膝前十字靭帯再建術を行い、再建3ヶ月後の摘出組織について透過型電子顕微鏡を用いてコラーゲン線維の径を詳細に分析し、脱細胞化した組織が生体内で再構築されることを初めて明らかにすることができた。研究は計画通り進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
組織から細胞成分を除去した脱細胞化組織は、生体本来の組織構造を兼備しているという、人工的に合成、製造する方法では成し得ない特徴を有している。平成29年度は、ウシ組織を対象とし、研究代表者が開発した厚さ10mm以上の腱および靭帯組織を損傷なく脱細胞化して抵抗原化する技術と、生体組織の強度保持を実現する滅菌技術を用い、臨床で再建組織として用いられる腱組織とヒトでは運動機能の低下の点から採取できない靭帯組織を用いてヒツジ膝前十字靭帯再建実験を行い、脱細胞化したウシ腱組織および靭帯組織のどちらも生体内でヒツジ自家細胞が浸潤し、微小血管が形成されることを明らかにした。また、脱細胞化した組織は生体内で組織再構築が起こることを、より人に近い力学的負荷が膝に作用する大動物実験で明らにした。 平成30年度は、1年の期間の動物実験を行い、生体内でコラーゲン径が太くなり、自己組織化が起きていくのかを検証していく。
|
備考 |
(1) 日本機械学会若手優秀講演フェロー賞を受賞:奥田慶也,伊藤匡史,岡村昭慶,八木優大,梅津光生,加藤善治,岡崎賢,岩﨑清隆,ヒツジ膝前十字靭帯再建に3ヶ月使用した脱細胞化ウシ組織のコラーゲン線維の生体内リモデリングの解明に向けた研究, 2017年12月14日 (2) 本研究が,井上達彦,大きな「飛躍」をもたらす着実なサイクル, 一橋ビジネスレビュー(2017.WIN), 178-194で紹介
|