研究課題
歯周組織再生に有効と考えられる生理活性物質とアパタイトのナノ複合膜を歯面上に迅速成膜するための、2種類のレーザー技術(液中成膜技術、膜転写技術)の開発を進めた。液中成膜技術では、抗菌性・歯質強化作用の期待されるフッ素を含むアパタイトを象牙質基材の表面に成膜し、成膜過程および生成膜の機能について検討した。まず、適量のフッ化ナトリウムを添加したリン酸カルシウム過飽和溶液中にヒト象牙質基材を設置し、同基材表面にパルスレーザー光を照射した。透過電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分光分析装置などによる分析の結果、照射5分以内に基材表面にアパタイトナノ結晶が析出し始め、照射30分後には厚さ数ミクロンのフッ素担持アパタイト膜へと成長することが分かった。このフッ素担持アパタイト膜は、基材表面に対し垂直方向にc軸配向した柱状ナノ結晶からなり、下地の象牙質基材と隙間なく接合していた。また、得られたフッ素担持アパタイト膜が、う蝕原因菌(S. mutans)に対し抗菌性を示すことを確認した。膜転写技術では、前年度の結果を基に、生理活性タンパク質(フィブロネクチンなど)を担持したアパタイト原料膜について、原料膜サポート基材に衝撃吸収性のポリジメチルシロキサン(PDMS)を利用したレーザー転写を検討した(前年度はPDMSをレシーバー基材として使用)。その結果、これまでは難しかった硬いポリエチレンテレフタレート(PET)基材表面への破砕の少ない転写を確認できた。前記の衝撃吸収性PDMSサポート基材を利用し、新たにヒト象牙質基材への転写を実施、アパタイトマイクロチップの転写堆積に成功した。得られた象牙質基材と転写膜の間に、大きなギャップのない界面を確認できた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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