研究課題
ミトコンドリアのゲノム変異と種々の疾患との関連が報告されており、本オルガネラを標的とした遺伝子治療が期待されている。本申請研究では、ミトコンドリア標的型ナノカプセル (MITO-Porter)を用いて標的ミトコンドリアへ遺伝子発現制御装置を運搬し、ミトコンドリア機能を遺伝子レベルで治療する事を目的とする。具体的には、疾患細胞の異常ミトコンドリアを認識するナノカプセルを構築し、その内部に治療用核酸を有する制御装置を搭載する。さらに、ナノカプセル投与後の疾患細胞のミトコンドリア機能を評価しその治療効果を検証する。2019年度は、下記の項目を中心に研究を遂行した。①疾患細胞ミトコンドリアの変異率評価RNA変異細胞が有する変異型RNAに対応する正常型RNAをMITO-Porterに搭載し、疾患細胞への導入を試みた。Amplification refractory mutation system (ARMS)-qPCR法を利用してミトコンドリア内部の正常型RNAおよび異常型RNAを定量しRNA変異率を算出した。その結果、RNA-MITO-Porter投与によってRNA変異率を有意に減少させることに成功した。②疾患細胞を用いた治療効果の検証正常RNA搭載MITO-PorterをRNA変異細胞に投与した後に、酸素消費量を指標としたミトコンドリア呼吸活性(治療効果の指標)を測定した。その結果、RNA変異率の減少に伴うミトコンドリア呼吸活性の改善が観察された。これらの検討より、MITO-Porterを用いたミトコンドリアへのRNA導入はミトコンドリア遺伝子治療戦略として有用であることが示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
本研究で得られた成果を基盤技術に据えたバイオベンチャーであるルカ・サインエス社が設立され(2018年)、自身も科学顧問に就任し(2019年)、2020年4月に開設された北海道大学・産業創出講座 (北海道大学が企業と組織・組織型の大型共同研究を推進するための制度: 候補者の所属する大学院薬学研究院では初の開設)の研究代表者に就任し、『ナノ医薬品』の開発研究を精力的に推進中である。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (3件) 産業財産権 (1件)
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