研究課題/領域番号 |
17H02098
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮田 完二郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50436523)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ドラッグデリバリー / 核酸医薬 / 高分子材料 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、がんを中心に様々な生体内組織へと核酸医薬をデリバリーする技術を確立することである。平成29年度は、1分子の核酸医薬(siRNAやアンチセンス核酸)と1~2分子の高分子材料から形成されるユニットポリイオンコンプレックス(PIC)に着目し、主として腫瘍組織への核酸デリバリー効率を評価した。まず血中滞留性を評価したところ、長鎖かつ分岐構造を持つPEG誘導体から調製されたユニットPICは、より長い血中半減期を示すことが明らかになった。また、ユニットPICの血中半減期は、搭載された核酸分子の化学構造の影響を受けることも明らかになった。具体的には、非天然型の修飾核酸や長鎖核酸医薬を用いることで、その血中半減期が劇的に改善されることが確認された。次いで、脳腫瘍同所移植モデルマウスへと適用したところ、核酸単体はほとんど脳腫瘍に集積しなかったが、ユニットPICは効率良く脳腫瘍に集積する様子が観察された。さらに、がん治療用(長鎖非翻訳性RNAを標的とする)アンチセンス核酸をユニットPICに搭載したところ、非常に強力な抗腫瘍効果を得ることに成功した。この結果と対応し、標的である長鎖非翻訳性RNAの腫瘍組織内での発現量が大幅に低下していることも確認された。今後は、腫瘍集積性に関するメカニズムの解明に取り組むと共に、さらに効率良く集積させるためのアプローチを創出する。その一方で、がん以外の標的組織への核酸デリバリーについても取り組む計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、核酸医薬を搭載したユニットPICを調製することで、優れた血中滞留性と腫瘍組織集積性が達成された。さらに、がん治療用のアンチセンス核酸を搭載することで、治療困難な悪性腫瘍として知られている脳腫瘍(膠芽腫)モデルに対する強力な抗腫瘍効果を得ることに成功した。以上より、順調に研究が進展しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ユニットPICをコア技術として、さらに腫瘍集積性を向上させるための技術開発に取り組む。具体的には、がん細胞表面のマーカーを認識するリガンド分子の導入などである。一方、がん以外の組織に対する核酸医薬デリバリーに向けて、デリバリーシステムのチューニングにも取り組む計画である。
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